デジタル時代の遺産:「アニマコード」

山崎琢磨がデザインした、デジタルデータを継承する新たな形

ソーシャルメディアの台頭により、私たちは日々の生活をテキスト、写真、動画としてオンラインに残し続けています。しかし、その投稿者が亡くなると、そのデジタルアーカイブは忘れ去られ、愛する人々にさえアクセスできなくなります。そんな問題を解決するため、物理的かつ感情的な行為である「スタンプ」の可能性を見つけたデザイナー、山崎琢磨。

山崎がデザインした「アニマコード」は、QRコードが刻印されたハンコ(日本の個人印)です。このユニークなコードには、個人のオンラインデジタルデータへの鍵が含まれており、その人が亡くなった後、遺族は事前にスタンプされたコードをスキャンすることで、その人のデジタルアーカイブにアクセスできます。このプロジェクトは、デジタル時代の継承に対する安全でありながら親密なアプローチを、印鑑を押すという物理的なインタラクションを通じて探求しています。

この製品は、耐候性と加工性に優れたアクリルを主要な素材として採用しています。この透明な素材は、デジタルデータの無形性と曖昧性、そして抗老化特性を象徴しています。技術メーカーと協力して、高精度の寸法をレーザー彫刻で切り出します。彫刻面は、カメラが10mm四方のQRコードを読み取れるように、鮮明なエッジ印刷のために親水性コーティングも施されます。

スタンプの寸法は10mm四方、長さ62mmで、QRコードの彫刻の繊細さと精度を補完する比率になっています。パッケージは、適切な内部湿度を維持するための保存に適した材料である桐木で作られています。桐の箱は、日本では古代から陶磁器や美術品を保管・保存するために使用されており、「継承」を意味しています。

ユーザーは、自分の死を前に専用サービスを通じてソーシャルメディアアカウントを製品に登録します。そのオンラインサービスへのアクセスキーとして機能するQRコードが印刷されたスタンプが作成されます。印鑑を受け取った人々は、それをカメラで読み取り、亡くなった人のアーカイブデータにアクセスすることができます。

このプロジェクトは2019年に日本で始まり、2021年に正式にローンチされる予定です。デジタルデータの死後の扱いに加えて、墓地の土地不足やその管理が最近の社会問題となっています。テクノロジー主導でありながらも大部分が物質的な複雑な時代において、このプロジェクトはデジタルとアナログの両方の視点から生の終わりを検討しています。墓地の小型化とデータと物質性の調和を通じて、この製品はこれらの問題への代替解決策を目指しています。

現世と来世をつなぐ試みという観点から、この製品は現実と非現実の世界の間に存在します。プロジェクトのユニークな特性から、最大の課題は、スタンプとしての機能を損なうことなく曖昧さをどのようにデザインするかでした。プロジェクトを進めるためには、さまざまな文化や宗教への配慮と尊重が求められます。生と死に対する多様な視点を、死という普遍的な出来事との調和を図りながら調整します。

ソーシャルメディアの普及により、デジタルメディアでの生活記録の生成が新たな人間の習慣となっています。しかし、一人の人が死ぬと、それらのデジタル財産はしばしば忘れられ、アクセスできなくなります。「アニマコード」は、個人のデジタルデータへのアクセスキーを含むQRコードが刻印された個人印です。事前にスタンプされたコードをスキャンすることで、遺族はその人のデジタル存在にアクセスすることができます。印鑑を押すという物理的なインタラクションを通じて、デザイナーはデジタル時代の継承に対する安全でありながら親密なアプローチを探求しています。

このデザインは2021年のA' Idea and Conceptual Design Awardでブロンズを受賞しました。ブロンズA' Design Awardは、経験と創造性を証明した優れたデザインに授与されます。芸術、科学、デザイン、技術のベストプラクティスを組み込み、強力な技術的および創造的なスキルを発揮し、生活の質の向上に貢献し、世界をより良い場所にすることを評価されています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: TAKUMA YAMAZAKI
画像クレジット: Photo:Takuma Yamazaki Design: Takuma Yamazaki
プロジェクトチームのメンバー: Takuma Yamazaki
プロジェクト名: Anima Code
プロジェクトのクライアント: TAKUMA YAMAZAKI


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