古代中国の伝説が息づく空間:「Zhongjiao Tianjun」

デザイナーLei Dongが創り出す新たな不動産展示空間

中国北部、天津の地で生まれた不動産展示空間「Zhongjiao Tianjun」。デザイナーLei Dongは、古代中国の伝説と風景を現代のインテリアデザインに落とし込み、見る者を異次元の世界へと誘います。

中国における掘削の技術は、紀元前3千年にまで遡ることができます。その起源は、大洪水を制御したとされる伝説の皇帝、大禹にまで遡ります。Lei Dongは、この伝説をテーマに、落ち着いた雰囲気と東洋的な感性を反映した空間を創り出しました。

このプロジェクトの舞台となったのは、天津市の最北部、地質的に豊かな地域である薊州です。Lei Dongは、この地の山岳風景を背景に、古代中国の民話や寓話を現代のインテリアデザインに昇華させ、不動産展示空間に新たな息吹を吹き込みました。

空間内の全ての家具はカスタムデザインされ、素材としては主に木材、石、金属、樹脂が使用されています。壁面インスタレーションは海辺の岩肌を再現し、素材の質感を巧みに組み合わせたデザインが特徴です。また、魚の鱗を重ねたようなデザインの壁面インスタレーションは、その空間の視覚的な焦点となっています。

交渉エリアの一角には、小さなテーブルで構成されたミニチュア風景が展示されています。テーブルには小麦が飾られ、豊穣を象徴しています。その背後の壁には、薊州の山岳地形を模したテクスチャーの3Dレリーフがあり、大禹の洪水制御の伝説に敬意を表しています。

また、交渉エリアのロビーの天井には、インタラクティブな機械芸術インスタレーション「Future Paddle」が飾られています。これは、鳥と魚の特性を併せ持つ伝説の生物「鯤鵬」をモチーフにしたもので、海底を泳ぐ怪物の骨格を思わせるデザインとなっています。

このプロジェクトは、2021年3月に始まり、同年6月に完成しました。その制作過程では、特に「Future Paddle」の設計と設置、デバッグに苦労したといいます。この装置は、動作と静止の間隔をプログラムで制御しており、その設定には細心の注意が払われました。

「Zhongjiao Tianjun」は、不動産センターの展示場という枠を超え、異なる種類のアートホールへと変貌を遂げました。Lei Dongは、中国の伝統的な要素を抽象的に再解釈し、空間全体を一つの物語として構築。訪れる者に、精神的なレベルでの対話を提供しています。

このプロジェクトは、2022年のA' Interior Space, Retail and Exhibition Design Awardでシルバー賞を受賞しました。この賞は、優れた技術力と創造性、革新性を持つデザインに対して授与されるもので、受賞はその卓越したレベルを証明しています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Lei Dong
画像クレジット: Photos by Sean
プロジェクトチームのメンバー: Duan Mingnan, Feng Lili, Fan Yajuan
プロジェクト名: Zhongjiao Tianjun
プロジェクトのクライアント: Serendipper Design


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