「Morita Wds 2023」展ブースは、従来の販売促進型展示から一歩踏み出し、製品の背景や開発ストーリーに光を当てることで、ブランドへの理解と共感を深めることを目指しました。モリタの技術史や製造現場の見学、開発者インタビューを通じて、製品が生まれるまでのプロセスやこだわりを来場者に伝える設計が特徴です。
ブース内では、製品の分解展示や透明なウィンドウ越しの内部機構の公開、開発秘話の紹介など、「見えないものを魅せる」工夫が随所に施されました。特に、寸法を露出させることで設計意図を明確に伝えるなど、細部へのこだわりが来場者の興味を引きつけました。
デザイン面では、「MORITA MUSEUM」と記されたサイドイルミネーションのサインが印象的です。一部を壁に埋め込むことで、来場者の視線を自然に誘導し、通常の展示とは異なる角度からブランドの魅力を体験できる空間を演出しています。グラフィックには製造工程を想起させる図面をベースに採用し、各コーナーのサインも製品名ではなく、来場者にとって有益なキーワードを用いて関心を喚起しました。
サステナビリティにも配慮し、壁面には部品の打ち抜きで生じた端材を活用。穴から内部を覗ける仕掛けがアイキャッチとなり、製造プロセスのリアルさを伝えています。さらに、接着剤を使わずネジで固定することで、展示後は工場に戻してリサイクルできる設計となっています。
このプロジェクトは、2023年9月29日から10月1日まで横浜で実施され、デザイナーの稲原翔太郎氏をはじめ、アートディレクターやプロデューサー、プロダクトマネージャーなど多彩な専門家が参画しました。製品開発現場の徹底したリサーチと、見えない価値を可視化するクリエイティブな発想が高く評価され、A'デザインアワード銀賞の受賞につながりました。
「Morita Wds 2023」展ブースは、単なる展示空間を超え、ブランドの哲学や技術力、サステナビリティへの姿勢を体感できる場として、今後のエキシビションデザインの新たな指標となるでしょう。ブランドの本質に触れたい方は、ぜひその革新的なアプローチに注目してみてください。
プロジェクトデザイナー: Shotaro Inahara
画像クレジット: Image #No1~5 : Photographer, Akira Arai.
プロジェクトチームのメンバー: Designer : Shotaro Inahara
Art Director : Akiyuki Maruyama
Producer : Tatsuya Sato
Producer : Riku Nishihara
Product Manager : Toshiki Takei
プロジェクト名: Morita WDS 2023
プロジェクトのクライアント: HAKUTEN Corporation