新聞ポスターで紡ぐ中銀カプセルタワーの新しい物語

メタボリズム思想を体感する革新的なグラフィックデザイン

「Unfolding A Nakagin Story」は、建築史に名を刻む中銀カプセルタワーの精神を、新聞という日常的なメディアを通じて再解釈したグラフィックデザインである。現代日本の都市住宅のあり方を問い直し、変化と個性を可視化する本作は、アートと建築、デザインの交差点に新たな価値をもたらしている。

ヤン・ティアンによるこの新聞ポスターは、毎日変化する新聞の特性を活かし、メタボリズム建築の「成長」と「変容」の概念を視覚的に表現している。新聞を広げるたびに、カプセルのパターンや窓の色、形状、配置が変化し、都市のダイナミズムを体験できる仕掛けが施されている。

本プロジェクトの着想は、戦後日本のモダニティ再定義に挑んだ黒川紀章の思想に根ざしている。彼は、住宅を「個々の細胞」と見立て、移動・成長・消滅する新しい社会像を描いた。新聞というメディアを通じて、その想像力を拡張し、都市の物語を「展開」することで、集合と個の両立を巧みに表現している。

技術面では、グラフィックはPhotoshopとIllustratorで制作され、建築モデルはRhinoとGrasshopperプラグインを用いてパターンや配置を自在に変化させている。カバーサイズは8インチ×12インチ、新聞本体は16インチ×24インチと、手に取ることで体感できるスケール感も特徴だ。

新聞を三度広げるごとに、7つのカプセルが強調され、それぞれの内部活動や個人情報が可視化される。繰り返されるユニットの中に個性が浮かび上がり、「個でありながら繋がっている」という中銀カプセルタワーの本質を体験できる設計となっている。

本作は、2025年A'デザインアワードのグラフィック・イラストレーション部門でIron賞を受賞。産業的要件を満たしつつ、革新性と実用性を兼ね備えた優れたデザインとして高く評価された。ポスターを手に取ることで、都市と個人の新しい関係性や、変化し続ける住まいの可能性に思いを巡らせるきっかけとなるだろう。

「Unfolding A Nakagin Story」は、都市の成長や個人の多様性を祝福し、メタボリズム建築の精神を未来へとつなぐデザインである。日常の中でアートや建築の新しい価値を発見したい人々に、ぜひ体験してほしい作品だ。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Yang Tian
画像クレジット: Yang Tian
プロジェクトチームのメンバー: Yang Tian
プロジェクト名: Unfolding a Nakagin Story
プロジェクトのクライアント: Yang Tian


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