deca joins「Heaven & Dirt」革新的ステージデザインの魅力

円と四角が織りなす没入型コンサート体験の新境地

「Heaven & Dirt」というテーマは、人生の旅路で出会うさまざまな瞬間を象徴しています。古代中国の「天円地方」思想――空は円く、地は四角いという世界観――をモチーフに、B'in Liveは巨大な円形照明構造と可動式の長方形LEDスクリーンを組み合わせ、天と地を物理的に表現しました。この斬新な設計は、観客の頭上に広がる円形の光と、地面を象徴するLED映像によって、アーティストたちが映像に包み込まれるような独特の空間を創出しています。

ステージのLEDはスリット状で透過性を持たせ、開演時にはバンドのシルエットがスクリーン越しに見え隠れする演出が施されました。これにより、観客の好奇心を刺激し、音楽への没入感を高めています。天井のサークルトラスにはTB1230が搭載され、高さや角度を自在に変化させることで、照明自体がアート作品として機能し、楽曲ごとに異なる空間演出を実現しました。

技術面では、会場の制約を最大限に活かし、LEDスクリーンの幅を22メートルまで拡大。台湾国内で入手可能な製品サイズを基に設計され、トラスの直径とLEDの幅を揃えることで、視覚的な一体感を追求しています。これにより、観客はまるで映像と音楽の中に包み込まれるような感覚を味わうことができました。

deca joinsの音楽は、非主流で詩的かつ芸術的な要素が特徴です。そのため、従来のコンサートとは異なり、メンバーの顔にスポットライトを当てるのではなく、会場全体の光で楽曲の雰囲気を表現。映像と照明を巧みに融合させることで、詩的な「余白」を生み出し、観客の感性に直接訴えかける演出が実現されました。

水をモチーフにした楽曲「Bathroom」「Fog」「Heavy Rain」「Waves」などがコンサートの骨格となり、冒頭では力強いアンサンブルとともに巨大LEDが上昇。楽曲「Nighttime Monologues」では円形照明が降下し、空間の広がりから一体感へと変化します。終盤の「B1」では、メンバーの想像力と超現実的な映像が融合し、視覚表現の新たな地平を切り開きました。

この公演は、A' Performing Arts, Stage, Style and Scenery Design Award 2025でIron賞を受賞。業界のベストプラクティスと革新的な技術を融合させた点が高く評価されています。deca joinsの初の大規模単独公演は、音楽とアートが一体となった新しいコンサート体験を提示し、観客の五感に深い印象を残しました。

今後も、音楽と空間デザインが融合することで生まれる新たなライブ体験に注目が集まります。deca joinsのような挑戦的な試みが、舞台芸術の未来を切り拓いていくことでしょう。