歴史と現代が響き合うイスタンブールのレトロパレ邸宅

マグノリアの中庭が紡ぐ、懐かしさと革新の住空間

イスタンブール旧市街の歴史的建築を舞台に、ヤスミン・アリアスが手がけた「レトロパレ」は、イタリアの優雅な中庭と現代的なデザインが融合した住まいです。マグノリアの大樹が象徴する自然美と、過去と現在をつなぐ建築的工夫が、都市生活に新たな癒しと洗練をもたらしています。

「レトロパレ」は、19世紀末から20世紀中頃にかけて大使館や宮殿が立ち並んだイスタンブール・トムトム地区に位置しています。かつてイタリアンホテルとして建てられたこの建物は、歴史的価値を残しつつ、現代のライフスタイルに合わせてリノベーションされました。中庭のマグノリアの木が空間の中心となり、自然と調和した静謐な雰囲気を生み出しています。

デザインの核となるのは、過去の建築様式と現代的な要素の融合です。ウォールナットやオーク、白と黒を基調としたタイムレスなカラーパレットに、グリーンやバーガンディ、クリーム色のアクセントがレトロな温かみを添えます。木材、ラッカー、マーブル、アイアンといった異素材の組み合わせが、統一感と奥行きを生み出しています。ガラスパーティションによる自然光の取り入れや、キッチンの白いキャビネットと黒いカウンタートップなど、機能性と美しさを両立させる工夫が随所に見られます。

この邸宅は、天井高3〜3.5メートルという歴史的建築ならではのスケール感を活かし、250平方メートルの広さにゆとりと奥行きをもたらしています。アートコレクションの配置や素材選びにも細心の注意が払われ、住まう人の個性や趣味が空間に自然に溶け込むよう設計されています。特に中庭から望むマグノリアの木と庭園は、都市の喧騒を忘れさせる癒しの場として機能しています。

プロジェクトの実現には、歴史的建造物の改修許可取得やパンデミックによる工期の遅延など、多くの課題がありました。しかし、ヤスミン・アリアスは「イタリアにいるような特別な雰囲気」を損なうことなく、旧き良き趣と現代の快適性を見事に融合させました。研究では、歴史的なテクスチャーと現代的なラインを組み合わせることで、機能的かつ感情的に豊かな空間が生まれることが示されています。

「レトロパレ」は、2025年にA' Design Awardのインテリア部門でシルバー賞を受賞。卓越した技術と芸術性、そして革新性が高く評価されました。歴史と現代、自然と都市、個性と普遍性が響き合うこの住まいは、イスタンブールの新たなライフスタイルの象徴となっています。

歴史的価値を大切にしながら、現代の快適な暮らしを実現する「レトロパレ」。その洗練された空間は、都市生活に新たな豊かさとインスピレーションをもたらし続けています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Yasmin Aryas
画像クレジット: Yasmin Aryas
プロジェクトチームのメンバー: Yasmin Aryas
プロジェクト名: Retro Palais
プロジェクトのクライアント: Yasmin Aryas Interiors


Retro Palais  IMG #2
Retro Palais  IMG #3
Retro Palais  IMG #4
Retro Palais  IMG #5
Retro Palais  IMG #5

デザイン雑誌でさらに詳しく読む