都市部では、犬がリードを付けてエネルギーを発散する光景が一般的だが、猫は窓辺で外を眺めるだけという姿が多い。猫も本来、外の世界に興味を持ち、好奇心を満たしたいと考える動物である。しかし、市場に出回るペット用ハーネスの多くは犬向けに設計されており、猫にはサイズや構造が合わないことが多かった。
「Wee」は、ナイロンウェビングの連続した一本と最小限の付属品のみで構成されているのが特徴だ。ほとんど縫製を必要とせず、全体の重量はわずか35gと超軽量。猫の身体に負担をかけず、装着していることを忘れるほどの快適さを実現している。瞬時に着脱できるスライドバックルを採用し、従来の中央リリース式バックルよりも使いやすさが向上している。
製造工程もシンプルで、ウェビングとファスナーは既製品を活用し、ソフトパッドのみをコンピュータ制御のミシンでカスタム製作。ウェビングはパッドのスロットに通し、ファスナーを固定した後、最小限の縫製で組み立てが完了する。これにより大量生産にも適した設計となっている。
操作方法は直感的で、初回のみ前面のスナップボタンと背面のスライドバックルを外し、猫の頭を通してから再度固定。ウェビングの長さは一度調整すれば、以降は胸元のストラップを引くだけでフィット感を調整できる。猫が嫌がることなく、素早く装着できる点が高く評価されている。
このプロジェクトは2024年3月から台北でスタートし、同年7月に完成。市場調査では、従来の猫用ハーネスが重すぎたり、脱走防止機能が不十分だったりする課題が浮き彫りになった。そこで「Wee」は、軽量性と脱走防止、着脱のしやすさを徹底的に追求。ウェビングを建築の配管のように折り曲げて構造を作るという発想が、縫製の手間を大幅に削減するイノベーションにつながった。
「Wee」は2025年、A' Design Awardのペットケア部門でシルバー賞を受賞。審査員からは「技術的な完成度と芸術性、そして猫のライフスタイルに寄り添った優れた発想」が高く評価された。都市で暮らす猫とオーナーに、新たなアウトドア体験をもたらすデザインとして注目されている。
猫の好奇心と快適性を両立する「Wee」は、今後のペットプロダクトデザインに新たな基準を示している。猫と共に安全に外出を楽しみたいと考えるすべてのオーナーにとって、理想的な選択肢となるだろう。
プロジェクトデザイナー: Shihchang Hsiao
画像クレジット: Image #1-5: photographer Shihchang Hsiao, 2024
プロジェクトチームのメンバー: Yuluen Huang
プロジェクト名: Wee
プロジェクトのクライアント: Hulumao