「Stacks」重なりが紡ぐ洗練のワビサビ住宅空間

光と影、素材の重なりが生む唯一無二の住まい

「Stacks」は、上質なライフスタイルを求めるクライアントのために設計された。空間はミニマルでありながら、オーディオビジュアルエンターテインメントを最大限に楽しめるスタジオとしての多様性も備えている。ワビサビの美意識を軸に、日常の中に独自性と静けさを感じさせる設計が特徴だ。

この住宅の最大の特徴は、「重なり（Stacks）」というテーマを空間全体に織り込んでいる点にある。光と影のコントラスト、層状に配置されたラインや面、そして自然素材の選定が、奥行きと温かみを生み出している。木材やアースカラーのパレット、グリルラインの仕切りなど、細部に至るまでワビサビの美学が徹底されている。

技術面では、曲線を描くTVウォールとビルトイン収納、キッチンアイランドバーの高低差を活かした床構成が、空間に立体的な広がりを与えている。バスルームのドアにはグリルパーティションスクリーンを採用し、視覚的なリズムとテクスチャーを加えている。これらの工夫が、機能性と美しさを両立させている。

環境への配慮も見逃せない。健康と環境に配慮したエコウッドパネルを使用し、ホルムアルデヒドなどの有害物質を抑制。さらに、リザーバースラッジを原料としたアーティスティックペイントが壁面に独特の質感を与えている。こうした素材選びが、サステナブルな住まいづくりを実現している。

空間構成はオープンプランのスタジオ形式を採用し、バスルームのウェット・ドライ分離、キッチンアイランドの新設、電気システムのアップグレードなど、現代の生活に即した機能性も充実。流れるような動線と重なり合う空間が、穏やかで非日常的な住まい体験を提供している。

「Stacks」は、日常に寄り添いながらも、芸術的な静けさと機能美を両立した住宅デザインの好例である。Yu Hong Wu氏の手腕が光るこの空間は、住まいに新たな価値と豊かさをもたらしている。今後の住宅デザインにおいても、ワビサビの美学とサステナビリティの融合が注目されるだろう。