夢と現実が交差する住空間「Lucid Dream」

テクノロジーとアートが融合する現代的なリノベーション

台湾の築15年マンションを舞台に、Shiang Lin Lu - Lus Designが手がけた「Lucid Dream」は、テクノロジー志向の夫とアートを愛する妻という異なる価値観を持つ夫婦のために、現代的かつ芸術的な住空間を創出したプロジェクトです。心理学的な“明晰夢”の概念をインスピレーションに、住まい手のライフスタイルに寄り添う快適で自然体な空間が実現されています。

このプロジェクトの特徴は、テクノロジー素材とアート素材の巧みな融合にあります。チタンメッキや磁性金属パネル、スレートタイル、イタリア製タイルなど多様なマテリアルが用いられ、温かみのある色調を基調に、天井・床・壁を横断する木材や石材、金属などが繊細な変化を生み出しています。特に、天井を貫く梁をチタンメッキの金属バーで覆い、流れるような視覚効果を演出している点が印象的です。

住まい手の美意識に応えるため、柔らかな素材や編み込みパネル、パターンタイル、植物などが随所に配置されています。主寝室のシャワーエリアにはイチョウ柄のタイルが施され、落ち着きと強さを象徴。マーブルの持つ重厚感と木目の温もりを対比させることで、現代的なデザインの中に心地よい調和が生まれています。テクノロジーの要素は、空間の清潔感とカジュアルさによって表現されています。

間取りは、元々4部屋だったものを3部屋に再構成し、開放的なソーシャルエリアや玄関ホールを拡張。天井梁には異素材を巻き付け、曲線と直線を組み合わせることで、書斎・ダイニング・リビングの境界を明確にしつつ、流動的な空間を実現しています。住まい手がアート作品を飾るためのスペースやカスタム収納、大きなミネラルペイントの壁面など、将来的な創作活動やコレクション展示にも配慮されています。

リノベーションにあたっては、床の不陸や遮音性の低さ、外部からの水漏れなど、築年数特有の課題をクリアするための構造的な工夫が施されました。また、複雑な素材やパターンのバランスをとることも大きなチャレンジとなりましたが、芸術性と機能性を両立させることで、住まい手の個性や美意識が反映された唯一無二の住空間が誕生しています。

「Lucid Dream」は、2025年A' Design Awardのインテリア部門でブロンズ賞を受賞。アート、サイエンス、デザイン、テクノロジーのベストプラクティスを取り入れ、住まいの質を高めることで、より良い暮らしを実現するデザインとして高く評価されています。日常と夢が交差するこの空間は、住まい手の想像力をかたちにした、まさに“明晰夢”のような住まいです。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Lus Design
画像クレジット: Lus Design
プロジェクトチームのメンバー: Shiang-Lin Lu
プロジェクト名: Lucid Dream
プロジェクトのクライアント: Lus Design


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