「Wedge House」は、敷地の半分以上が急な斜面という厳しい条件下で設計されました。さらに、古い高い擁壁の上に位置するため、建物が擁壁に負荷をかけない構造が求められました。そこで採用されたのが、地下が最小、上階に向かうほど広がるウェッジ(くさび)型断面という大胆な発想です。
この住宅の最大の特徴は、建築面積40%という厳しい規制をクリアしつつ、必要な居住空間を確保するために、地下1階(鉄筋コンクリート造)と地上2階(木造)からなる混構造を採用した点にあります。特に2階は眺望に優れ、リビングスペースとして最大限に活用されています。下階に行くほど面積が小さくなり、擁壁への負担を最小限に抑える工夫が施されています。
東西の外壁にはシルバーのガルバリウム鋼板が使用され、地下から張り出すカンチレバー構造の床を支えると同時に、南側の眺望をフレーミングする役割も担っています。地下は斜面に包まれるような安心感のある寝室、1階は深い軒下から公園の緑を望む水回りと書斎、2階のLDKからは大阪平野を一望できるスカイテラスが広がります。五月山の三つの異なる斜面を住空間で楽しめる設計です。
設計にあたっては、木造建築での張り出し構造や、古い擁壁に負荷をかけない安定した基礎形状の研究が重ねられました。狭小かつ急傾斜という敷地条件に対し、地下の形状や上部木造の張り出し構造によって、空間効率と安全性を両立させています。建物の総床面積は111.16㎡、幅5.56m×奥行11m×高さ10.19mというコンパクトな中にも、豊かな眺望と快適な生活空間が実現されています。
このプロジェクトは2022年9月に着手し、2024年6月に完成。斜面地住宅の新たな可能性を示す設計として高く評価され、2025年にはA'デザインアワード建築部門でブロンズ賞を受賞しました。厳しい規制や自然条件を創造性で乗り越えた「Wedge House」は、都市と自然の共生を目指すこれからの住まいづくりに一石を投じています。
「Wedge House」は、限られた土地や厳しい規制下でも、豊かな暮らしと美しい景観を両立できることを証明しています。都市部の斜面地や狭小地における住宅設計の新たな指針として、今後の建築・デザイン分野に大きな影響を与えることでしょう。
プロジェクトデザイナー: Kiyoshi Sugimoto
画像クレジット: All photos and videos Hirofumi Imanishi
プロジェクトチームのメンバー: KIYOSHI SUGIMOTO
プロジェクト名: Wedge House
プロジェクトのクライアント: Masato Ikuta