本プロジェクトの着想は、半世紀以上にわたり家族の歴史を刻んできた住宅そのものに由来する。設計者たちは、家の持つ独自の個性を守りつつ、経年変化の痕跡を日常の一部として受け入れることを重視した。むき出しのレンガや構造体が、時と人生の物語を語り、過去と現在が自然に溶け合う空間を目指している。
「Unfinished Journey」は、構造補強を美的言語として取り入れ、再生の概念を再定義している。露出したスチールシステムは、老朽化したフレームを強化するだけでなく、視覚的なアンカーとして空間に存在感を与える。可変性の高いレイアウトやアダプティブな家具、呼吸する素材の仕上げが、時間とともに進化する住まいを実現。耐久性と機能性、そして控えめなインダストリアル美が、従来の住宅デザインには見られないバランスで共存している。
施工は保存と補強を優先したサブトラクティブなアプローチで進められた。オリジナルの赤レンガには通気性のあるコーティングを施し、質感を保ちながら埃の発生を抑制。補強用のスチール部材は現場でカスタム製作され、構造の一体感と開放感を両立した。軽量スチールフレームの採用により、老朽化した基礎への負担を軽減しつつ、空間の自由度を高めている。
この住宅は、地上2階と地下1階からなり、各階は105平方メートル。1階はリビング・ダイニング・キッチン・バスルームのオープンプラン、2階は寝室・バスルーム・共用のリビング兼ワークスペースで構成されている。大きな開口部から差し込む自然光がレンガ壁に陰影を落とし、滑らかなコンクリート床に足音が響く。スライド式のバーンドアや、スチールと木の質感が、住まい手に過去との静かなつながりをもたらす。
設計にあたっては、老朽建物の素材挙動や構造適応に関するリサーチが重ねられた。現地調査や構造診断、素材テストを通じて、元の要素を活かしつつ耐久性を高める手法が模索された。特に、露出スチールシステムと通気性コーティングの組み合わせが、美観と機能性の両立に寄与し、持続可能なリノベーションの新たなモデルとなっている。
最大の課題は、家族の思い出を損なうことなく構造安全性を確保することだった。湿気による劣化や、記録のない基礎への対応など、現場での試行錯誤と創造的な問題解決が求められた。こうした困難を乗り越え、「Unfinished Journey」は記憶と機能が調和する、時を超えて成長する住宅へと昇華された。
「Unfinished Journey」は、2025年A' Design Awardのインテリアスペース部門でIron賞を受賞。産業界の要件を満たす実用性と革新性、そして心地よさを提供するデザインとして高く評価されている。記憶を紡ぎながら未来へと続く住空間のあり方を、静かに、しかし力強く提案している。
プロジェクトデザイナー: Vivian Chiu
画像クレジット: Image #1: MD Pursuit
Image #2: MD Pursuit
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Image #5: MD Pursuit
プロジェクトチームのメンバー: Designer: Vivian Chiu
Designer: Ke Ye Wu
プロジェクト名: Unfinished Journey
プロジェクトのクライアント: Pure Interior Design Limited Company