遊びながら水への恐怖を克服する新発想の浮遊補助具Crabee

子どもの安全と自信を育むインタラクティブなデザイン

世界保健機関によると、毎年約37万人が溺死で命を落とし、そのうち60%が18歳未満の子どもです。特に1歳から4歳の子どもにとって溺死は主要な事故死因の一つとなっています。こうした背景を受け、Chih-Yun Li氏率いるデザインチームは、子どもたちが水への恐怖を克服し、安全に水辺で遊べるように設計された新しい浮遊補助具「Crabee」を開発しました。

Crabeeは、3歳から9歳の子どもを対象にした学習用浮遊デバイスです。最大の特徴は、遊びを通じて水への恐怖心を和らげる点にあります。モジュール式のシェルデザインにより、子どもたちは自分でパーツを組み替えながら、さまざまな遊び方を体験できます。これにより、水に慣れる過程が自然と楽しいものへと変わります。

本体と5つのリングはEVAフォームで作られており、水に強く、耐久性にも優れています。パーツの組み合わせによってサイズ調整ができ、子どもの体格や成長に合わせて長く使える設計です。また、ペリスコープ(潜望鏡)や浮遊ボールなどのアクセサリーも付属しており、異なる泳力を持つ子どもたちが一緒に遊びながら学べる工夫が施されています。

Crabeeの操作は直感的です。円錐状の本体は体格に合わせて調整でき、リングを投げたりキャッチしたりして「カニの殻を探す」遊びを楽しめます。水中に潜れない子どもでも、ペリスコープを使って水面から水中を観察できるため、恐怖心を和らげながら水への興味を引き出します。さらに、浮遊・沈没する宝石(ボール)を使った宝探しゲームも用意されており、遊びながら自然と水に親しめる設計です。

開発にあたっては、既存の浮遊補助具の課題を徹底的にリサーチし、保護者や専門家へのインタビューを重ねました。PVCやPP素材の使用も検討されましたが、安全性や耐久性、デザインの自由度からEVAフォームへと切り替えられました。これにより、製品寿命の延長と生産工程の簡素化が実現しています。

Crabeeは2023年6月にプロジェクトが始動し、2024年2月にサンプルが完成。2025年の本格的な市場投入を目指して、専門家によるテストも予定されています。2025年にはA'デザインアワードのブロンズ賞も受賞し、その革新性と社会的意義が高く評価されています。

Crabeeは、子どもたちが安全に、そして自信を持って水と触れ合うための新しい選択肢を提供します。遊びと学びを融合させたこのデザインは、子どもの成長と命を守るための一歩として、今後の水辺のライフスタイルに大きな変革をもたらすでしょう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Lin Yu-He
画像クレジット: Image #1: Creator Li Chih-Yun, 2024 Image #2: Creator Li Chih-Yun, 2024 Image #3: Creator Li Chih-Yun, 2024 Image #4: Creator Li Chih-Yun, 2024 Image #5: Creator Li Chih-Yun, 2024
プロジェクトチームのメンバー: Lead Designer: Li Chih-Yun Assistant Designer: Lin Yu-He, Wu Yi-Chen, Chen Zih-Jin, Chuang Chu-An Professor: Li Kai-Chu
プロジェクト名: Crabee
プロジェクトのクライアント: Li Chih-Yun


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