アラビカ リヤド ロースタリー:劇場型カフェの新たな体験

巨大焙煎機と多層空間が生む五感のコーヒーステージ

アラビカ リヤド ロースタリーは、約900平方メートルの倉庫をリノベーションし、劇場のような空間構成で訪れる人々に新しいカフェ体験を提供しています。デザインを手がけた渡辺淳氏は、巨大な焙煎機を主役に据え、コーヒー作りの物語を五感で楽しめる場を創出しました。

このカフェの最大の特徴は、劇場を思わせる空間演出にあります。店舗奥に設置された特注の巨大焙煎機がステージの主役となり、その周囲をアラビカの象徴であるビーンズセラーが囲みます。オーケストラピットの位置にはキッチンカウンターが設けられ、吹き抜けのアトリウムからはバリスタの心地よい音が店内に響き渡ります。来店者は、焙煎から抽出までのプロセスを間近で体感できるだけでなく、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感すべてでコーヒーの世界に没入できます。

フロア構成も劇場のように工夫されています。ステージ前の床は一段低く設計され、周囲には上層席が配置されています。これにより、ほとんどの座席からステージが見渡せる視界が確保されています。天井高もエリアごとに変化し、落ち着いた低天井の席や開放的なアトリウム席など、多様な空間体験が可能です。入口の階段は外からもステージが見える高さに設計されており、劇場のような高揚感を演出しています。

内装はアラビカのブランドカラーである白を基調に、人工大理石やレンガ、パンチングメタル、フラット塗装面など多様なテクスチャーで奥行きのある白を表現。床にはトップコート仕上げのエポキシ樹脂を採用し、清潔感のあるシームレスな仕上がりを実現しています。アトリウム天井には間接照明をパンチングメタル越しに設置し、自然光のような柔らかな明るさを演出しています。

座席のバリエーションも豊富です。バリスタのパフォーマンスを間近で楽しめるベンチシートや、キッチンとステージを見渡せるボックス席、1階にはステージ全体を俯瞰できるカウンター席や窓際の4人掛け席も用意されています。各席はサウジアラビアの文化や利用者の多様なニーズに配慮して設計され、シアーカーテンによるプライバシー確保や民族衣装でも座りやすい家具形状、身だしなみを整えるためのミラーなど、細やかな工夫が施されています。

このプロジェクトは2019年4月にリヤドでの現地調査から始まり、同年11月に設計が完了。コロナ禍による工期延長を経て、2022年5月にオープンしました。現地のカフェ文化や利用者の声を反映した空間づくりは、世界的なデザイン賞であるA' Design Awardのプラチナ賞を受賞し、現代インテリアデザインの新たな指標となっています。

アラビカ リヤド ロースタリーは、コーヒーを味わうだけでなく、その物語や空間体験を楽しむ新しいカフェの在り方を提案しています。劇場型の空間で、コーヒーの奥深い世界に触れてみてはいかがでしょうか。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Jun Watanabe
画像クレジット: Jun Watanabe
プロジェクトチームのメンバー: Creative Director:Keita Aono Designer:Jun Watanabe
プロジェクト名: Arabica Riyadh Roastery
プロジェクトのクライアント: no.10, NOMURA Co., Ltd.


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