言葉を超える舞台:Enno Cheng「Daughters」コンサートの革新

多層LEDスクリーンが描く新しいコミュニケーションのかたち

2022年8月、台北で開催されたEnno Cheng「Daughters」コンサートは、言語の壁を超えたコミュニケーションをテーマに、B’in Liveによる革新的なステージデザインが注目を集めた。音楽、映像、身体表現、テキストが融合し、観客に深い共感と新たな気づきをもたらす体験を創出した。

「Daughters」コンサートのインスピレーションは、呉明益の著書『小雨の国』の一章「脳が言語を得た方法」に由来する。Enno Chengのアルバムが伝える“コミュニケーション”のテーマを、B’in Liveは四つの独立して動く正方形LEDスクリーンで具現化。これらのスクリーンは、言葉を超えたメッセージの伝達を象徴し、音楽やジェスチャー、映像と連動して、観客に多層的な情報と感動を届けた。

このコンサートの最大の特徴は、音楽と舞台美術が一体となって多様なコミュニケーション手法を表現している点にある。スクリーンは開閉や伸縮、重なり合いを自在に変化させ、時には完全な正方形を形成。伝統的な透明LEDではなく、発色と光の陰影を際立たせるため通常のLEDを採用し、視覚的な深みを追求した。各曲の本質を捉えた演出は、観客に“人間らしさ”や“思いやり”といった普遍的なテーマを投げかける。

技術面では、四層のLEDスクリーン(各6m×6m、8枚の3m×6mパネル)が縦横に可動し、演出ごとに異なる構成を実現。天井の耐荷重とスクリーンの動作バランスを両立させるため、事前の入念な検証とFine Art 156ライトの採用が決め手となった。これにより、ダイナミックな映像演出と安全性を両立し、観客を没入させる空間を創出している。

パフォーマンスには、手話や台湾語、観客の手拍子や動きを取り入れ、多様な自己表現と理解の形を提示。音楽、身体、言葉、シンボルが重なり合うことで、単なるメッセージ伝達を超え、思いがけない共感や力強さを生み出す。これは、コミュニケーションの進化と無限の可能性を体現する試みと言える。

Enno Chengの15年にわたるキャリアの集大成として、初のダンスやピアノ演奏にも挑戦した本公演。A'デザインアワード銀賞受賞という評価は、アートとテクノロジーの融合による新たな舞台芸術の可能性を示している。多様なメディアを駆使した「Daughters」は、観客に深い余韻と再考を促し、現代社会における“つながり”の本質を問いかけ続ける。

「Daughters」コンサートは、アートとテクノロジーが生み出す新しいコミュニケーションの形を体感できる舞台として、今後のパフォーミングアーツの指標となるだろう。多様性と共感を重視する社会において、こうした試みがさらなる創造性と対話を促進することが期待される。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: B'IN LIVE CO., LTD.
画像クレジット: B'IN LIVE CO., LTD.
プロジェクトチームのメンバー: Creative Director:Crystal Chuang Show Director:Wenyu Shih Show Crew:Genie Hsiao / Genie Hsiao / Kelly Wang / Doris Li / Ruby Lin Technical Coordination:B’in Live Stage Manager:Shiuan Min Pam Stage & Set Design:Roni Wu / Nia Chen Lighting Design:(ANH Design) Hwua Hwua Shen / Ashton Wu / Suschi Chen Video Content Director:Bonnie Kuo Video Content Design:Bonnie Kuo / Jessic Chen / Ruby Chi / Nas Weng / Minting Lin / (Phototaxi) Nelson Wu, Mo Lee, Caca Ma Camera Director:Phoebe Lu Assistant Camera Director:Sing-ru Lin
プロジェクト名: Enno Cheng Daughters
プロジェクトのクライアント: B'IN LIVE


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