「サーカディアンホーム」は、上海・建国西路の高層マンション29階に位置し、310平方メートルの広さを持つ。デザイナーのCamille Chung氏は、COVID-19パンデミックによる生活様式の変化を受け、自然との調和やサーカディアンリズム(生体リズム)を重視した空間設計を追求した。住まいが心身のリセットと充電の場となるよう、自然光の取り込みや素材選びに細心の注意が払われている。
プロジェクトの施工は、パンデミックによる移動制限下で進行した。現場作業と工場加工の役割分担を徹底し、工事スケジュールを再編成。これにより現場での騒音や大気汚染、不要な移動を最小限に抑え、効率的かつ環境負荷の少ない建築プロセスを実現した。
内装仕上げには、木材、大理石、特殊塗装を採用。特に壁面の大理石は厚さ6mmの薄板をアルミニウムで補強し、施工性と環境配慮を両立した。全ての造作家具やミルワークは工場生産とし、現場での廃棄物や騒音を抑制。持続可能性と美しさを兼ね備えた空間が誕生した。
間取りはクライアントの要望に応じて、2つの寝室、プライベートワークスペース、ファミリールーム、ゲストを招くためのダイニングとリビングを配置。ワイヤーやコントロールパネルを極力見せない設計で、日常の煩雑さを感じさせない直感的な住まいを実現している。オープンキッチンと隣接するバーカウンターは、イベント時の機能性と省エネ性を両立する工夫が施されている。
設計・施工は2021年3月から2022年2月まで、リモートコミュニケーションを駆使して進行。特に3メートルのカンチレバー構造(ヨットをイメージした造形)は、Zoomや3Dモデリング、360度写真を活用し、現場に足を運ばずに課題解決を図った。こうしたデジタル技術の活用が、パンデミック下でも高品質な空間づくりを可能にした。
「サーカディアンホーム」は、シンプルでありながら複雑な設計思想を内包する。フランク・ロイド・ライトの「シンプルさとは本質を見極めること」という言葉を引用しつつ、見た目の美しさの背後にある高度な収納や機構を巧みに隠し、使う人が自然体で過ごせる空間を実現している。
このプロジェクトは、2025年A'デザインアワードのインテリア部門でIron賞を受賞。業界のベストプラクティスと技術力を融合し、住む人に充足感とポジティブな感情をもたらす空間として高く評価された。都市生活における新たなウェルビーイングの指標として、今後の住宅デザインに大きな示唆を与えている。
プロジェクトデザイナー: Camille Chung
画像クレジット: #1#2#3#4: Photographer StudioSZ / Justin Szeremeta, 2024
プロジェクトチームのメンバー: Camille Chung
プロジェクト名: The Circadian Home
プロジェクトのクライアント: Devalo Design