空と共生する横浜都筑の新しい住まいのかたち

中庭を中心に自然と調和する都市型住宅の革新

都市部での住まいは、隣家との距離が近くなることが避けられません。現代住宅は断熱性や気密性、エネルギー効率を重視し、プライバシー確保のためにカーテンを閉め切る生活が一般的です。しかし、伝統的な日本家屋は自然や気候と調和し、住む人の暮らしを映し出してきました。失われつつあるこの価値観を現代に蘇らせることが、今求められています。

横浜都筑の住宅プロジェクトは、高松伸と玉井啓による設計で、都市の密集地でも自然と調和した暮らしを実現することを目指しています。伝統的な日本家屋から着想を得て、現代の住まいに「空」との深い結びつきを再定義しました。設計の中心には大きな中庭が据えられ、すべての部屋がこの中庭を囲むように配置されています。どこにいても空が身近に感じられ、開放感に包まれる空間が生まれています。

この住宅の最大の特徴は、法的に許される限り広い中庭を設け、全室が一体となった「ワンルーム」のような構成を持つ点です。中庭を通して四季折々の空が室内に映し出され、住まいの中に豊かな時間の流れが生まれます。中庭は実際の広さ以上の開放感と流動性をもたらし、日常に活力と安らぎを与えます。この柔軟なレイアウトは、家族の成長やライフスタイルの変化にも対応できる設計となっています。

技術面では、敷地面積213.98平方メートル、建築面積85.29平方メートル、延床面積160.02平方メートルというスペックを持ち、都市部の限られた空間を最大限に活用しています。各部屋から空を望むことができ、自然光や風を取り入れながら、快適で持続可能な生活環境を実現しています。

設計の背景には、京都の町家のような伝統的な日本住宅の研究があります。これらの家は、密集した都市の中でも光や風、自然を生活に取り込む工夫がなされていました。現代の住宅が性能重視で自然から切り離されている現状に対し、エネルギー消費を抑え、自然と再びつながる暮らしの重要性が強調されています。

プロジェクトは2014年に始まり、数年にわたる議論とビジョンの明確化を経て、2017年には「around the sky」がグッドデザイン賞を受賞。その後も「with the sky」「along the sky」、そして今年は「in the sky」と名付けられた2棟が完成しました。高価格帯の住宅市場で価値を提供するため、著名な建築家との協働や、コストとデザインのバランスを追求する挑戦が続けられています。

この住宅は、2025年にA'デザインアワード建築部門でブロンズ賞を受賞しました。芸術、科学、デザイン、テクノロジーのベストプラクティスを融合し、生活の質を高める革新的な住まいとして高く評価されています。

都市の中で自然と共生する新しい住まいの提案は、現代のライフスタイルに新たな価値観をもたらします。空とつながる開放的な空間が、これからの都市住宅のスタンダードとなる可能性を示しています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Kei Tamai
画像クレジット: Kei Tamai
プロジェクトチームのメンバー: architect:Shin Takamatsu designer:Shin Takamatsu
プロジェクト名: Yokohama Tsuzuki
プロジェクトのクライアント: SKYMISSION


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