若き剣士の夢を舞台で描く:ワン・チー・ワールドツアー

伝統と現代が融合する革新的なコンサートステージデザイン

台湾を拠点とするB'in Live Co., Ltd.が手掛けたワン・チー(周華健)ワールドツアーは、武侠小説の世界観と現代的な演出技術を融合し、観客に新たな音楽体験を提供した。伝説的な楽曲と壮大な舞台美術が織りなすこの公演は、2025年A'デザインアワードでブロンズ賞を受賞し、アートとテクノロジーの最前線を示している。

ワン・チーは「トップシンガー」や「スレイヤー」と称されるマンダリン音楽界の重鎮であり、その代表曲は金庸の武侠作品と深く結びついている。今回のコンサートでは、リフレクション(内省)とリバース(再生)を象徴する二重ステージ構成を採用。B'in Live Co., Ltd.のデザインチームは、機械仕掛けの変形、山岳を模したカーテン、LEDプロジェクションを駆使し、ワン・チーの音楽と武侠の精神を見事に融合させた。

ステージの前半は「剣士のバラード」と題され、ワン・チーが人生の深い洞察を持つ武術家として登場。霧がかった山々を思わせるカーテンと、透過性のある水墨画風プロジェクションが幻想的な世界を創出する。彼の力強くも優しい歌声は、愛や憎しみ、運命といったテーマを鮮やかに表現し、観客の心に深く響いた。

後半は「青春」をテーマに、現代的な要素が前面に押し出される。カーテンが機械的に引き上げられるとバンドが姿を現し、LEDスクリーンと最新機材が会場を一気に現代的な雰囲気へと変貌させる。これにより、感情の高まりがさらに増幅され、若い世代から年配層まで幅広い観客層の共感を呼んだ。

このステージデザインの核となるのは、約100キログラムの防炎グレーファブリック製カーテン。6枚のカーテンは高さ1,336cmに及び、強力な機械装置で素早く昇降する。カーテンの密度や質感は、投影の鮮明さと光と影の効果を最大化するために何度も実験を重ねて調整された。台北アリーナ公演では、幅5,200cmの大型LEDスクリーンと2枚の小型スクリーンが設置され、全体の舞台幅は約100メートルに達した。

この公演は、チケットが即完売するほどの反響を呼び、追加公演が検討されるほどの人気を博した。観客からは、舞台美術やビジュアルだけでなく、ワン・チーのユーモアや温かみのあるパフォーマンスにも高い評価が寄せられた。竹の葉が揺れ、光と影が交錯する静謐な演出は、音楽と空間が一体となる特別な時間を創出している。

伝統的な武侠の世界観と最先端テクノロジーを融合させたB'in Live Co., Ltd.のデザインは、アートとイノベーションの新たな可能性を示した。今後もこのような挑戦的な舞台表現が、音楽とライフスタイルの未来を切り拓くことが期待される。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: B’IN LIVE CO., LTD.
画像クレジット: B'in Live Co., Ltd.
プロジェクトチームのメンバー: B'in Live Co., Ltd.
プロジェクト名: Wakin Chau
プロジェクトのクライアント: B’IN LIVE CO., LTD.


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