水と平和の詩:広島ピースソング展が伝える希望

タイポグラフィと水の流れが紡ぐ新たな平和のメッセージ

2024年、広島で開催された「広島ピースポスター展」は、原爆投下から80年を目前に控え、平和の本質を再考する場として注目を集めました。デザイナー片上直也氏は、「広島ピースソング」の歌詞と水のイメージを融合させ、現代の広島が持つ穏やかな空気と、平和の広がりを視覚的に表現しています。

この展覧会は、広島市中心部にある被爆建物「旧日本銀行広島支店」を会場に開催されました。会場は爆心地からわずか380メートルという歴史的な場所であり、多くの市民や観光客が訪れるため、第一印象で心に残るデザインが求められました。片上氏は、アクツィデンツ・グロテスクという歴史的な書体を主要なタイポグラフィに選び、展覧会タイトルには映画『オッペンハイマー』でも使われたゴッサムを採用。これにより、現代的な感覚と歴史的文脈が交差する独自の世界観を生み出しています。

デザインの核となるのは、「広島ピースソング」の英語歌詞と水の流れ。水は被爆者が渇望した存在であり、同時に現在の広島の街並みを象徴しています。片上氏はレオナルド・ダ・ヴィンチの水流に関する手稿を研究し、一滴の水が滝となり、やがて川となって広がっていく様子をタイポグラフィで表現。シンプルな白地に配置された歌詞は、静謐さと奥深さを感じさせ、観る者に平和の本質を問いかけます。

展覧会の動線設計にも工夫が凝らされています。来場者はまず、2メートル×5.5メートルの大きなタペストリーに迎えられ、続くサイネージやインフォメーションボードを辿りながら、平和のメッセージを体感します。水の分子構造を模したデザイン要素が随所に散りばめられ、個人からコミュニティへと広がる平和の連鎖を象徴しています。

このプロジェクトは商業的な目的ではなく、平和の本質を深く表現することを目指しています。展示された68点の学生ポスターやプロデザイナーによる作品、そして「ヒロシマ・アピールズ」シリーズが一堂に会し、訪れる人々に新たな視点と対話のきっかけを提供しました。A4サイズのフライヤーは原爆資料館や市内各所に配布され、多くの来場者を呼び込む役割も果たしました。

「広島ピースポスター展2024」は、デザインの力で平和の意義を再発見させる場となりました。水の流れのように静かに、しかし確実に広がる平和のメッセージは、今後も多くの人々の心に響き続けることでしょう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Naoya Katagami
画像クレジット: Main Image: PHOTO / Naoya Katagami, SOUND / Words by Yoshio Shigezono Music by Minoru Yamamoto The city of Hiroshima, Image #1: PHOTO / Naoya Katagami, SOUND / Words by Yoshio Shigezono Music by Minoru Yamamoto The city of Hiroshima Image #2: PHOTO / Naoya Katagami, SOUND / Words by Yoshio Shigezono Music by Minoru Yamamoto The city of Hiroshima Image #3: PHOTO / Naoya Katagami, SOUND / Words by Yoshio Shigezono Music by Minoru Yamamoto The city of Hiroshima, Image #4: PHOTO / Naoya Katagami, SOUND / Words by Yoshio Shigezono Music by Minoru Yamamoto The city of Hiroshima,
プロジェクトチームのメンバー: Naoya Katagami
プロジェクト名: Hiroshima Peace Song
プロジェクトのクライアント: JAGDA HIROSHIMA


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