「Fuma」は、かつて栄えた町の一角に位置し、東側には1日約250本の列車が行き交う鉄道が走ります。北側には飲食街が広がり、住環境としては決して理想的とは言えない立地でした。さらに、長年住む住民の記憶には大規模な水害の経験も残っています。こうした厳しい条件のもと、松山将勝氏は「快適な生活空間を創出する」という課題に挑みました。
この住宅の最大の特徴は、2階のリビング・ダイニングと3階のシアタールームを吹き抜け空間でつなぎ、1階の中庭から3階テラスまでを東西軸で、2階南側テラスから北側階段室までを南北軸で有機的に結びつけている点です。内部と外部の空間が交錯し、多様な居住環境を生み出しています。住まい手の「この地で暮らし続ける」という強い意志が、開放的で静謐な建築を形作りました。
東側ファサードの1階壁は線路からセットバックし、2階・3階の複雑な構造体や庇が騒音や振動、外部からの視線を遮断します。一方で、これらの構造体の隙間からは自然光や外部の気配が室内に届きます。中庭に面した大開口部は、室内空間を半屋外のように拡張し、内と外の境界を曖昧にしています。
構造面では、2階を大きく張り出すために、2層・3層にわたる耐力壁と、東西軸に沿った2本のPCケーブルによるキャンティレバー構造を採用。南側の象徴的なU字型壁も張り出しを支えています。これにより、3階建てでありながら2階でほぼ生活が完結する「平屋的な暮らし」を実現しました。
住まい手は朝、テラスのテーブルでコーヒーを楽しみ、晴れた日にはパラソルを広げて植物の間を吹き抜ける風を感じながら一日を始めます。列車の騒音や振動を感じることなく、カーテンを閉めることもなく、開放的な暮らしが続きます。子どもたちはアトリウムを駆け回り、家族の笑顔があふれる空間となっています。
「Fuma」は、土地の持つポテンシャルを最大限に引き出し、その場所でしか成立しない唯一無二の建築を追求した結果生まれました。都市の喧騒と自然、家族の豊かな時間が共存するこの家は、現代の住まいの在り方に新たな指針を示しています。
福岡県で2021年6月から2024年1月までの約2年半をかけて完成した「Fuma」は、鉄筋コンクリート造3階建て、敷地面積510.86㎡、延床面積464.76㎡。コンクリート、キャンティレバー、アトリウム、植栽などの要素が融合し、リゾートホテルのようなラグジュアリーさと、自然との一体感を兼ね備えています。
都市における新しい住まいの可能性を体現した「Fuma」は、今後の建築・ライフスタイルデザインに大きな影響を与えることでしょう。都市の制約を超え、心地よさと開放感を追求する住まいづくりへの挑戦は、今後も続いていくはずです。
プロジェクトデザイナー: Masakatsu Matsuyama
画像クレジット: Image #1: Photographer Toshihisa Ishii, FU-MA, 2024
Image #2: Photographer Toshihisa Ishii, FU-MA, 2024
Image #3: Photographer Toshihisa Ishii, FU-MA, 2024
Image #4: Photographer Toshihisa Ishii, FU-MA, 2024
Image #5: Photographer Toshihisa Ishii, FU-MA, 2024
プロジェクトチームのメンバー: Masakatsu Matsuyama
プロジェクト名: Fuma
プロジェクトのクライアント: MATSUYAMA ARCHITECT AND ASSOCIATES