NG Architectsによる「ヴィリニュスの幼稚園」は、バルト海沿岸の白樺や松林の風景を建築に取り入れた独創的な教育施設である。外観は森の影と調和するダークカラーのファサードが特徴で、縦長の大きな窓からは四季折々の自然が感じられる。建物の中心には六角形の中庭が設けられ、子どもたちが安全に遊び、学び、好奇心を育む「不思議の世界」を象徴している。
この幼稚園の最大の特徴は、建築と自然環境の一体化にある。地元産の木材をふんだんに使用した中庭の床は、子どもたちが裸足で遊ぶのにも適した温かみのある質感を持つ。NG Architectsは、感覚的な体験や自然光の取り入れ、外の景色とのつながりを重視し、子どもたちの五感を刺激する空間づくりを徹底している。
建築技術面では、耐候性に優れた外壁パネルや大判の強化ガラスを採用し、安全性と快適性を両立。パノラマウィンドウからは森の景色が広がり、日差しをコントロールする工夫も施されている。地元の素材を活用することで、環境への配慮と持続可能性も追求された。
施設は総床面積557平方メートル、7つの教室(うち2つは乳児専用)、六角形の中庭、2つのエントランスを備え、柔軟な空間利用が可能。2021年に着工し、2023年にヴィリニュス郊外の「ウオグ・スレニス」開発地区内に完成した。設計にはリードアーキテクトのイグナス・ヴェンガリス氏をはじめ、ランドスケープやインテリアの専門家も参加している。
このプロジェクトは、2025年のA'デザインアワード建築部門でシルバー賞を受賞。審査員からは「技術力と芸術性を兼ね備えた、子どもたちの好奇心と成長を促す優れた教育空間」と高く評価された。
ヴィリニュスの幼稚園は、自然と建築の調和がもたらす新しい学びの形を示している。子どもたちが自然の中で自由に遊び、感性を育むこの空間は、今後の教育建築のモデルケースとなるだろう。
プロジェクトデザイナー: NG Architects
画像クレジット: Image #1: Photographer Norbert Tukaj, Kindergarten in Vilnius, 2023
Optional Image #1: Photographer Norbert Tukaj, Kindergarten in Vilnius, 2023
Optional Image #2: Photographer Norbert Tukaj, Kindergarten in Vilnius, 2023
Optional Image #3: Photographer Norbert Tukaj, Kindergarten in Vilnius, 2023
Optional Image #4: Photographer Norbert Tukaj, Kindergarten in Vilnius, 2023
プロジェクトチームのメンバー: Lead architect: Ignas Vengalis
Lead designer: Filippo Erasti
Landscape Architect: Dovilė Ivanauskienė
Interior Architect: Justyna Molis
プロジェクト名: Kindergarten in Vilnius
プロジェクトのクライアント: NG Architects