フリップチェアの着想は、合板を曲げた際に生まれるエラスティックなカーブの幾何学に基づいています。Niko Kapaは、線と動きへの興味を機能的なデザイン言語へと昇華させ、人間の身体のプロポーションに合わせて合板ストリップを折り重ねることで、椅子の寸法を導き出しました。この独自のアプローチが、視覚的にも機能的にも新鮮な座り心地を生み出しています。
フリップチェアの最大の特徴は、その柔軟性と変形能力にあります。椅子を「フリップ」するだけで、異なるシーティングポジションやデザインへと変化し、利用者の気分や用途に応じて自在に対応します。この変形機能により、素材の削減と形状の統一感が強調され、視覚的な一体感が生まれています。さらに、軽量でありながら高い剛性を実現している点も特筆すべきポイントです。
製造工程には、低エネルギーかつ低廃棄物で有害な接着剤を使用しない「スチームベンディング(蒸気曲げ)」技術が採用されています。蒸気によって木材を曲げながら同時に乾燥させることで、従来の乾燥方法に比べてエネルギー消費を大幅に削減。仕上げには低VOC塗装やBio Shield天然オイルを用い、木材本来の質感を最大限に引き出しています。
構造面では、重なり合う合板ストリップが安定性と柔軟性を両立。クッションはフレームの延長として最小限の素材と要素で設計され、座り心地と機能性の両立を追求しています。カラーバリエーションはナチュラルなブナ材仕上げに加え、ブラックやホワイトも展開され、インテリアに合わせた選択が可能です。
デザインリサーチでは、曲線の組み合わせと人間工学に基づく快適な姿勢の両立を目指し、実物大モックアップやクッションのテストを重ねました。また、植物の成長を想起させる流動的なフォルムは、木材の持つ自然な美しさとテクスチャーを際立たせています。Dorma Designの製品哲学にも調和し、量産にも適した設計となっています。
フリップチェアは、2025年A'デザインアワードのアイアン賞を受賞。業界のベストプラクティスと高い技術力を融合し、実用性と革新性を兼ね備えたデザインとして高く評価されています。ミニマルな素材使いと純粋なフォルムの追求が、現代の持続可能なライフスタイルに新たな選択肢を提供しています。
フリップチェアは、機能美とサステナビリティを両立させた新時代の家具として、日々の暮らしに柔軟な変化と洗練されたデザイン体験をもたらします。今後のインテリアシーンにおいて、その存在感はますます高まることでしょう。
プロジェクトデザイナー: Niko Kapa
画像クレジット: Studio Niko Kapa
プロジェクトチームのメンバー: Niko Kapa
プロジェクト名: Flip
プロジェクトのクライアント: SNK