歴史的建築を未来型オフィスへ:Matrix Beyond Bronzeの挑戦

セグラムビル再生が示すサステナブルな職場の新基準

ニューヨークの象徴的なモダニズム建築、セグラムビル。その歴史的価値を守りつつ、現代の働き方と環境配慮を両立させる革新的リノベーション「Matrix Beyond Bronze」が、オフィス空間の未来像を提示している。

セグラムビルは、ミニマリズムの美学とモダニズムの象徴として知られるが、建設当時はエネルギー効率が重視されていなかった。現代社会では、歴史的建築物を保存しつつ、サステナビリティや多様な働き方への対応が求められている。特にパンデミック以降、従来のオープンプランオフィスは個人の境界の希薄さが課題となり、空間の再設計が急務となっている。

「Matrix Beyond Bronze」は、セグラムビルのモダニズム構造に45度のグリッドを重ね合わせることで、ダブルスキンファサードを創出。これにより、建物の歴史的外観を保ちつつ、エネルギー効率を大幅に向上させている。三角形のウェルネススペースや、収納・パーティション・階段として機能する追加構造体が、柔軟で多様な働き方を可能にするゾーニングを実現。人間中心のウェルビーイングとサステナビリティを両立させた設計が特徴だ。

技術面では、モジュール化されたCLT(クロスラミネイティドティンバー)と二重ガラスカーテンウォールを採用し、精度の高い施工と廃棄物削減を実現。高性能ガラスと統合ブラインドが断熱性と遮光性を高め、エネルギー消費を抑制する。既存構造とのシームレスな統合により、歴史的価値を損なうことなく、現代的な快適性と機能性を付加している。

オフィス内では、追加構造体がパーティションや収納壁として機能し、流動的な動線と明確な空間の境界を両立。受付、会議室、ライブラリー、ラウンジ、階段など多様なワークゾーンを形成し、AR/MRシステムの導入によって物理空間とバーチャル空間のシームレスな連携も実現されている。これにより、対面とリモートの協働が自然に促進される。

このプロジェクトは、建築エネルギー効率、ポストパンデミックの職場デザイン、空間心理学に基づくリサーチを重ねてきた。モジュール型パーティションの配置や開放度の検証により、適度な境界が集中力と生産性を高めることが実証されている。歴史的建築物の保存と現代的な働き方の両立という難題に対し、45度グリッドの導入と内部ファサードの追加により、サステナビリティと快適性を両立した解決策が導き出された。

「Matrix Beyond Bronze」は、2025年A'デザインアワード(建築部門)でIron賞を受賞。実用性と革新性を兼ね備えたこのリノベーションは、歴史的建築の新たな可能性を提示し、未来のオフィス空間の在り方に一石を投じている。今後の都市再生や職場デザインの指針として、さらなる注目が集まるだろう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Shujian You
画像クレジット: Shujian You
プロジェクトチームのメンバー: Shujian You
プロジェクト名: Matrix Beyond Bronze
プロジェクトのクライアント: SJ


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