歴史と未来をつなぐ高鍋二之丸歴史博物館の再生

地域の誇りを育む文化拠点へのデザインリニューアル

宮崎県高鍋町に位置する高鍋二之丸歴史博物館は、老朽化した展示と来館者減少という課題を抱えていました。2024年、建築家・梶智洋による全面的なリニューアルを経て、地域の歴史と文化を次世代へ伝える新たな文化拠点として生まれ変わりました。

高鍋二之丸歴史博物館のリニューアルは、地域の活性化と歴史的価値の再発見を目指して始動しました。1986年に秋月藩の歴史を伝える施設として設立されたものの、展示の陳腐化により来館者の関心が薄れていました。高鍋町が誇る教育と文化の伝統を再び町民の誇りとするため、博物館は単なる展示空間から、学びと交流の場へと進化しました。

本プロジェクトの最大の特徴は、「仁(じん)」という慈愛の歴史をテーマに据え、地域の物語を視覚的かつ直感的に伝える空間設計です。高鍋城跡という歴史的な立地を活かし、博物館の名称やビジュアルアイデンティティ、サイン計画、ナラティブデザインまで一新。来館者が町の独自性を再発見し、市民としての誇りを育む場として再構築されました。

展示はグラフィックと空間デザインを融合し、歴史を視覚的に体験できる構成となっています。エントランスにはコンセプトを象徴するディスプレイとタグラインを設置。第一展示室では象徴的なデザインのゾーニングサインが来館者を誘導し、第二展示室では高鍋藩の歴史や明倫堂、秋月種茂公のSDGs政策などを紹介。中央には歴代藩主と政策を示すアクリルパネルが配され、赤のグラデーションが歴史の連続性を象徴しています。

展示空間はテーマや時代ごとにゾーニングされ、来館者が自然な流れで歴史を体験できるよう設計されています。重層的なアクリルパネルは時のつながりを可視化し、物語性のある展示が直感的な理解を促進。限られた資料や予算の中で、グラフィックと空間演出を駆使し、没入感のある展示体験を実現しました。

このリニューアルは、比較調査や歴史家へのインタビューを通じて、地域の人材育成や文化継承の歴史に光を当てた点が評価され、2025年にA' Design Awardのゴールデン賞を受賞しました。高鍋二之丸歴史博物館は、今や地域の遺産と未来をつなぐインタラクティブな学びと交流の場として、多くの人々に新たな価値を提供しています。

歴史的建築の再生は、地域社会のアイデンティティを強化し、文化的持続可能性を高める重要な役割を担います。高鍋二之丸歴史博物館の事例は、デザインの力が地域の誇りと未来への希望を育むことを示しています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Tomohiro Kaji
画像クレジット: Illustrations: Tomohiro Kaji Image #1-#5: Photographer Kai Kanno (Nacasa & Partners)
プロジェクトチームのメンバー: Tomohiro Kaji
プロジェクト名: Takanabe Ninomaru
プロジェクトのクライアント: Takanabe Town Hall


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