刀の美学を纏う現代サイドボード「Tachi」

日本刀の深い切り込みが生む力強さと洗練の融合

サムライの象徴である太刀からインスピレーションを得た「Tachi」は、歴史と現代デザインが交差するサイドボードとして、空間に新たな価値をもたらす。

「Tachi」は、デザイナーのYilmaz Doganによって生み出された現代的なサイドボードである。その名は中世日本の刀「太刀」に由来し、サムライが戦いや儀式で用いた象徴的な武器の美しさと力強さを現代のインテリアに昇華している。太刀の深い切り込みや流麗なフォルムは、所有者の地位や誇りを示すものであり、「Tachi」もまた、空間に存在感と品格を与えるアートピースとして設計された。

このサイドボードの最大の特徴は、交差するシャープなラインが生み出すダイナミックな造形美にある。光と影が織りなす彫刻的な表面は、見る角度によって異なる表情を見せ、空間に常に新鮮な印象を与える。金属製の脚部は幾何学的な構造を支えつつ、全体のデザインバランスを保つ役割を担う。複雑でありながら過度にならないパターンは、力強さと気品を兼ね備えた独自性を際立たせている。

製作にはラッカー仕上げの木材パネルとCNCカット技術が用いられ、滑らかな表面と精密なラインを実現。特製のスライド式ドア機構により、扉同士が重ならずに美しく整列する。構造上生じる隙間を補うため、脚部には背面からのサポートが施されており、真鍮コーティングされた金属脚が全体の統一感を高めている。

幅240cm、高さ78cm、奥行48cmというサイズに加え、内部は多様な収納ニーズに応える機能的な設計がなされている。ボディと脚部の一体化によって、耐久性と美観の両立が図られている点も特徴だ。開閉しやすい扉と広々とした内部空間は、日常の利便性と美的満足感を同時に提供する。

開発過程では、日本刀の美学と構造的安定性、素材の調和について徹底的なリサーチが行われた。特にスライドドアの機構設計と脚部の支持点の最適化には高度な技術が投入され、静的安定性を確保するための内部サポート構造が新たに開発された。これにより、デザイン性と機能性が高次元で融合している。

「Tachi」は、2025年にA'デザインアワード(家具部門)ブロンズ賞を受賞。芸術性・技術力・創造性に優れた作品として国際的にも高く評価されている。歴史的なモチーフを現代のライフスタイルに調和させることで、空間の質を高めるデザインオブジェクトとして注目を集めている。

伝統と革新の対話から生まれた「Tachi」は、アートと機能美を追求する現代の空間に、唯一無二の存在感と洗練されたエネルギーをもたらす。歴史を纏うデザインが、日常に新たなインスピレーションを届けている。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Yilmaz Dogan
画像クレジット: A. Murat ARIK Erinç ULUSOY Giray AYDOS
プロジェクトチームのメンバー: Yilmaz Dogan
プロジェクト名: Tachi
プロジェクトのクライアント: QZENS Furniture


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