谷六坂の最大の特徴は、店内のほぼ全域を占める販売台だ。スタッフ用の通路を最小限に抑え、スタッフが店外で顧客に直接サービスを提供するレイアウトが採用されている。この大胆な販売スタイルは、近隣の八百屋や魚屋の活気ある接客から着想を得たもの。店舗の外で積極的に声をかけることで、地域に賑わいをもたらし、従来の「来店を待つ」姿勢から一歩踏み出した。
デザインコンセプトは「山頂の雲海」。お茶とともにスイーツを楽しみながら、雲海を見下ろす贅沢なひとときをイメージしている。店舗が位置するのは「真田山」と呼ばれる小高い丘。かつて武将・真田が城を築いた歴史ある場所であり、山と呼ぶには控えめな高さだが、確かに丘の頂上にある。その地形を活かし、雲海をテーマにした空間演出が生まれた。
店内には、雲を思わせる柔らかな曲線と、山頂の開放感を感じさせる広がりが随所に表現されている。スイーツの陳列も、まるで雲の上に並ぶ宝石のよう。訪れる人々は、日常の中で非日常的な体験を味わうことができる。今福明俊は、「地域の歴史と風景を現代的なデザインで再解釈する」ことを意図し、伝統と革新のバランスを追求した。
このプロジェクトは、2025年のA'デザインアワード(インテリア空間・小売・展示部門)でブロンズ賞を受賞。審査員からは「芸術性と機能性を両立し、地域社会に新たな価値をもたらした」と高く評価された。写真家・石橋正浩によるビジュアルも、店舗の世界観を鮮やかに伝えている。
谷六坂は、単なるスイーツショップを超え、街と人、自然と歴史をつなぐ新しいライフスタイルの拠点となっている。日常に彩りと発見をもたらすこの空間は、今後の店舗デザインに新たな指標を示している。
プロジェクトデザイナー: Akitoshi Imafuku
画像クレジット: Photographer: Masahiro Ishibashi
プロジェクトチームのメンバー: Designer: Akitoshi Imafuku
プロジェクト名: Taniroku Saka
プロジェクトのクライアント: Akitoshi Imafuku