光と時が紡ぐ住まい「The Ori」:調和する美学と機能

欧州ヴィンテージと和北欧が融合する柔軟な空間デザイン

台湾で2024年に完成した「The Ori」は、Zouii Designによる住宅プロジェクト。光、素材、空間の流れが絶妙に絡み合い、住まう人の個性と日々の変化を映し出す現代的な住環境を提案している。

「The Ori」は、単なる建築物としての枠を超え、住まい手の記憶や感情が息づく“光”の物語を紡ぐ場として設計された。プロジェクト名の由来であるヘブライ語の「光」に象徴されるように、日常の流れを照らし出す柔らかな光と影の対話が空間全体に広がる。設計は2022年に構想され、光と人、物が絶えず交わる“聖域”としての住まいを目指した。

この住宅の特徴は、厳格なスタイルの枠組みを排し、住まい手が愛するヨーロッパのヴィンテージ家具の風合いを取り入れつつ、日本の静謐さと北欧のシンプルさを調和させた点にある。エントランスには和のペンダントライトが柔らかな光を落とし、床から天井までの窓が塩水渓の景色を切り取り、曲線天井がダイニングへと光を導く。テレビとソファの配置を入れ替えるなど、将来的な変化にも柔軟に対応できる設計がなされている。

素材選びにもこだわりが光る。壁はグレイッシュなミルキーホワイトのミネラル塗装で仕上げられ、上質で温かみのある印象を演出。エントランスの蛇紋模様のセラミックタイルは自然石のような表情を持ち、木材やゼブラパターンが空間にリズムとコントラストをもたらす。これらの要素が繊細な質感と奥行きを生み出し、視覚的にも豊かな住空間を実現している。

112.3平方メートルの敷地には3つの寝室、リビング、ダイニング、2つのバスルームが配されている。書斎のサイズを縮小し、将来的にはゲストルームや子ども部屋としても活用可能に。ダイニングテーブルはソーシャルエリアへ移動し、家族の活動の中心となるよう設計された。さらに、固定収納を廃し独立した2つのストレージルームを設けることで、収納力と空間の開放感を両立している。

完成から半年後のフォローアップでは、住まい手が自然光や気分、日々のニーズに応じて家具のレイアウトを自在に変化させていたことが確認された。特に収納室の柔軟性が高く評価され、生活の中で光がより自由に巡ることで、空間の調和と快適さが一層高まったという。曲線天井による配管の隠蔽など、技術的な課題も巧みに解決されている。

「The Ori」は、光と影、歴史と現代、機能と詩情が共存する住まいの新たな可能性を示している。2025年にはA' Interior Space, Retail and Exhibition Design Awardのブロンズ賞を受賞し、アートとテクノロジーの融合による生活の質向上が高く評価された。今後も、住まいと人が共に成長し続ける柔軟な空間デザインの指標となるだろう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Zouii Design
画像クレジット: Uncolored Studio
プロジェクトチームのメンバー: Ching-Yi Lin, Hsien-Ming Hsu, Yi-Hong Tsai, Hsiu-Ting Hsieh
プロジェクト名: The Ori
プロジェクトのクライアント: Zouii Design


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