伝統と現代が融合する劇場型寿司レストラン「照寿司」

茶道の導線と円形カウンターが生み出す新しい食体験

北九州市の老舗寿司店「照寿司」は、伝統と革新を融合させた劇場型レストランへと生まれ変わった。茶道の精神を取り入れた導線や、舞台のような円形カウンター、職人技を間近で感じられる空間設計が、従来の食事の枠を超えた新しいダイニングエンターテインメントを提案している。

照寿司は、北九州市に根付く伝統的な寿司店を、現代的なエンターテインメント空間へと大胆に再構築したプロジェクトである。デザイナーの寺井則彦氏は、茶道の「待つ」体験に着想を得て、来店者が期待感を高めながら進む通路を設計。店内へ足を踏み入れると、黒を基調とした空間が広がり、伝統素材と最新技術が巧みに融合している。

最大の特徴は、舞台を思わせる円形カウンター。すべての席から職人の手仕事を間近で観察できる設計となっており、寿司づくりの所作や盛り付けの美しさがライブ感覚で楽しめる。照明は料理と職人の動きを際立たせ、五感すべてを刺激する演出が施されている。

素材選びにもこだわりが光る。温かみのある土壁やイタリア製タイル、伝統的な美濃焼の陶板が空間に奥行きを与え、入り口の灰や木材が和の趣を演出。これらの素材が調和することで、親密で贅沢な雰囲気が生まれている。

プロジェクトの背景には、食事にエンターテインメント性を求める顧客ニーズの高まりがあった。空間デザインのリサーチでは、暗めの色調や自然素材、舞台照明が記憶に残る体験を生み出すことが明らかになった。円形カウンターやパフォーマンス性の高い演出が、ゲストの没入感を高めている。

限られた95㎡の空間で、伝統と現代性、機能性と芸術性を両立させるため、細部にわたる工夫が施された。空間の一体感を高めるための素材選定や、照明の微細な調整、パフォーマンス要素の統合など、数々の課題をクリアし、唯一無二の劇場型寿司体験を実現している。

照寿司は、2025年にA' Design Awardのインテリアスペース部門でシルバー賞を受賞。伝統美と現代的なデザイン、職人技とエンターテインメント性が見事に調和した空間は、国内外から高い評価を集めている。今後も、食と空間の新たな可能性を切り拓く存在として注目されるだろう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Norihiko Terai
画像クレジット: Norihiko Terai
プロジェクトチームのメンバー: Interior designer : Norihiko Terai
プロジェクト名: Teru Sushi
プロジェクトのクライアント: VRILLO Co., Ltd.


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