光と柔軟性が生む、台北のモジュール型住空間

境界を曖昧にする設計がもたらす新しい暮らしの可能性

本プロジェクトの着想は、モジュールシステムの概念に基づいています。各エリアを独立したキューブやゾーンと見なし、それらを住まい手の行動や空間の必要性に合わせて再配置することで、空間の輪郭が自在に変化します。スライドドアを活用することで、オープンな空間の中にもプライベートなゾーンを簡単に創出でき、境界線が曖昧でありながらも、必要に応じて明確に再定義できる点が特徴です。

Studio Oneは、オープンフロアプランを採用し、空間の奥行きと回遊性を最大限に引き出しています。80平方メートルの限られた面積に、リビング、ダイニング、キッチン、ドレッシングルーム、ゲストルーム、主寝室、バスルームを効率的に配置。自然光をふんだんに取り入れることで、室内の素材が時間とともに表情を変え、エネルギー効率の向上にも寄与しています。

設計においては、既存の梁構造を分析し、壁や開口部を再配置することで、圧迫感を軽減しながらも収納を兼ねたパーティションを設けています。これにより、機能性とデザイン性を両立しつつ、空間の境界が住まい手のニーズに応じて柔軟に変化する仕組みを実現しました。

素材選びにもこだわりが見られます。モノクロームのカラースキームと、テクスチャーの異なる木材パネルやミネラルペイントを採用し、自然光との対話によって静謐な雰囲気を演出。光の移ろいとともに、壁や床、収納の質感が繊細に変化し、住空間に豊かな表情をもたらします。

このプロジェクトは、2023年12月に台北で完成し、2025年にはA' Design Awardのブロンズ賞を受賞。審査員からは「アート、サイエンス、デザイン、テクノロジーのベストプラクティスを融合し、生活の質を向上させる創造的な設計」と高く評価されました。

「A Moment」は、都市型住宅における空間の使い方や暮らしの在り方に新たな視点を提示しています。柔軟な設計と素材の美しさが融合したこの住空間は、今後のインテリアデザインの可能性を広げる一例となるでしょう。