新本社ビルは、世界的な楽器メーカーであるヤマハ株式会社のグローバル拠点として、静岡県浜松市に誕生した。最大の特徴は、低層部に設けられた大きなオーバーハングが既存棟と新棟を有機的につなぎ、社員同士の交流やブランドコミュニケーションを促進するネットワーク型のデザインにある。この設計思想は、組織の一体感や創造的なコラボレーションを生み出す場として高く評価されている。
建物外観は、安定感のある基壇部の上にシンメトリーなダブルスキンカーテンウォールを配し、空や周囲の景観を映し出しながら本社としての威厳と垂直性を強調している。下層部には開放的なピロティ空間と2層吹き抜けのアトリウム、上部テラスにはウッドデッキや植栽が施され、内外のつながりと自然との調和を実現。内部空間はモノクロームの色調や多様な素材、天井形状の変化、バイオフィリックデザインによって、ヤマハの哲学が随所に表現されている。
オフィスプランは、社員が自律的に働くことを促すABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)コンセプトを採用。多様な座席や場所を用意し、出社する価値を高める高機能な環境を提供している。さらに、ヤマハ独自のウェブ会議システムなど先端技術を導入し、本社から国内外の拠点・工場への円滑な情報伝達とコラボレーションを実現している。
設計段階では、アフターコロナ時代の新しいオフィス像を追求し、標準階には自然換気を確保するための通風窓を設置。現地の風向を解析し、換気性能や温湿度環境の改善効果を流体解析で検証した。また、建物が周辺環境に与える影響を最小限に抑えるため、日影や風環境のシミュレーションを実施し、最適な形状・配置や植栽計画を策定。地域社会と調和し、持続可能な建築を目指した。
構造面では、基礎免震構造を採用し、事業継続性を確保。鉄骨造の上部構造は耐震柱による開放性と剛性を両立し、カンチレバー梁や独立柱、低摩擦支承など高度な技術で大きなオーバーハングを実現。SRC基礎や軒下に配置した柱頭など、細部にわたりストレス伝達や連続性を追求した設計が施されている。
このヤマハ本社新社屋は、2025年にA'デザインアワードのゴールドを受賞。芸術・科学・技術の進歩を体現し、世界にインパクトを与える卓越した建築として高く評価されている。ブランド価値の可視化、働き方改革、環境配慮を融合したこのプロジェクトは、次世代オフィスの新たな指標となるだろう。
プロジェクトデザイナー: Yuya Kimura
画像クレジット: Image #No1-5: Photographer Naomichi Sode (SS Co., Ltd)
プロジェクトチームのメンバー: Hiroshi Satake
Kenji Matsuoka
Rei Sato
Hirofumi Ueda
Kazuhiro Yasufuku
Yuya Kimura
プロジェクト名: Yamaha Corporation Headquarters
プロジェクトのクライアント: Yamaha Corporation