「Rinn Kyoto Miyagawasuji Hitotose Aki」は、京都・宮川筋の伝統的な町並みを尊重しつつ、現代的なデザインアプローチで新たな宿泊体験を提案している。織原美紀が手掛けたこのホテルは、到着時のほの暗さから室内の明るさへと誘う照明計画が特徴的で、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に着想を得ている。間接照明が壁の質感を際立たせ、素材や光の選定にも細心の配慮がなされている。
この施設の最大の特徴は、地域との調和を重視した設計思想にある。地元の和紙作家・波多野渉との協働により、柿渋和紙やこより技法を用いた陰影表現が実現。地産地消を意識した素材選びと、伝統的な町並みに温もりと新しさをもたらす工夫が随所に見られる。
京都の厳格な景観規制に対応しつつ、外部照明を1階内部に巧みに取り入れるなど、伝統と現代のバランスを追求。2階では京都の職人による「静」と「動」の空間が演出され、宿泊者に奥深い体験を提供している。和紙は粘土混合や色和紙、漆喰との組み合わせ、さらに防腐・撥水性に優れる柿渋や手作業のこより、袋貼り技法など多様な表現が用いられている。
設計プロセスでは、和紙作家との色彩や施工方法に関する議論を重ね、谷崎潤一郎『陰翳礼讃』や李御寧『縮み志向の日本人』、ブルーノ・タウト『ニッポン』などの文献を再読し、思想を深めた。夏の暑さや冬の寒さにも配慮し、快適性と伝統美の両立を実現している。
「Rinn Kyoto Miyagawasuji Hitotose Aki」は、外と内をつなぐ日本的な空間観を体現しつつ、長期滞在にも適した快適さと多彩なアクティビティを提供する。デザインが都市の文化継承に果たす役割を意識し、未来へと受け継がれる新たな町家スタイルを提示している。
伝統と革新が響き合うこのホテルは、京都の美意識を現代に伝える新たなランドマークとして、国内外のデザインシーンから高い評価を受けている。地域文化と現代的な快適性が見事に融合した空間は、訪れる人々に驚きと感動をもたらし続けている。
プロジェクトデザイナー: Miki Orihara
画像クレジット: Main Image / Toshihide Kajiwara
Image #1 / Toshihide Kajiwara
Image #2 / Toshihide Kajiwara
Image #3 / Toshihide Kajiwara
Image #4 / Toshihide Kajiwara
プロジェクトチームのメンバー: Lead Designer : Miki Orihara
Interior Designer : Mao Namikawa
Graphic Designer : Kei Sakai
Washi paper-making artist : Wataru Hatano
プロジェクト名: Rinn Kyoto Miyagawasuji Hitotose Aki
プロジェクトのクライアント: Rinn Kyoto Miyagawasuji Hitotose Aki