本プロジェクトは、兵庫県加古川市に位置し、大真空の本社機能と生産機能を一体化したスマートファクトリーとして設計されました。外観は、厚みや角度の異なる長方形のボリュームを積層することで、クリスタルチップの持つ周波数特性を建築的に表現。これにより、企業の技術進化の歴史と未来への成長を象徴しています。ランダムに配置されたボリュームが生み出す陰影は、クリスタルが圧力や温度変化で微妙に変形しながらも安定した周波数を保つ様子を想起させます。
照明デザインは、クリスタルチップのカット角度に着目。ATカット(35.15度)、CTカット(38度)、DTカット(52度)などの角度を基に、ライン照明にこれらの要素を取り入れ、空間全体にブランドのアイデンティティを反映しています。また、サーカディアンリズム(概日リズム)に基づく色温度の変化を導入し、知的生産性の向上を目指した先進的な照明環境を実現しました。
建物は地上5階建て、延床面積10,243.16㎡。中央に吹き抜けを設け、天窓から自然光が各階に降り注ぐ設計とすることで、エネルギー効率と開放感を両立。異なるフロアの従業員同士の偶発的な交流やコミュニケーションを促進し、オープンで連続性のあるワークスペースを形成しています。
設計の根底には「スマートファクトリーと建築デザインの統合」というリサーチ目標があり、クリスタルチップの厚みや角度を空間デザインに反映。これにより、エネルギー効率と知的生産性の両立を実現しています。環境負荷の最小化を目指し、先進的な生産システムと省エネ技術も積極的に導入されました。
「Stacked Crystal Form」は、企業の製品そのものを建築として象徴化した点で独自性が際立っています。外観からインテリア、照明に至るまで一貫したモチーフを展開し、ブランドアイデンティティを空間全体で体感できる設計は、今後のオフィス・工場建築の新たな指標となるでしょう。
積層クリスタルのモチーフが空間に息づくこのスマートファクトリーは、技術とデザインの融合による新しい働き方と生産環境を提案しています。企業の成長とイノベーションを支える建築のあり方として、今後さらなる注目が期待されます。
プロジェクトデザイナー: Nobuaki Miyashita
画像クレジット: Image #1-#5: Photographer Nobuaki Miyashita, Variations, 2024
プロジェクトチームのメンバー: N/A
プロジェクト名: Stacked Crystal Form
プロジェクトのクライアント: DAISHINKU CORP.