再生鋼材で紡ぐデジタル時代のオフィス空間

産業遺産と現代美が融合する新たなワークプレイス

山口県で完成した「Embraced in Recycled Steel」は、三好信明が手がけたオフィスインテリア。再生鋼材の美しさとデジタルアイデンティティを融合し、サステナブルかつ革新的な空間体験を実現している。

このプロジェクトは、Kyoei Steelのリサイクル鋼材を主役に据え、従来は隠されがちなアングル鋼や鉄筋、フラットバーを大胆に露出させることで、素材そのものの力強さと質感を空間の美的要素へと昇華させている。デジタル時代を象徴するバーコードやQRコードのパターンが、壁面や階段手すりに組み込まれ、企業のウェブサイトと物理的な空間が視覚的にリンクされている点が特徴だ。

照明計画にも革新が見られる。天井の鋼製ルーバーにはビレット形状のシームレスLEDが組み込まれ、再生鋼材とテクノロジー、光が織りなすダイナミックな演出が空間全体に広がる。これにより、素材の持つ無骨さと洗練された現代性が共存し、オフィスに新たな価値観をもたらしている。

設計段階では、再生鋼材の構造的・美的な可能性を最大限に引き出すため、素材実験や空間シミュレーション、照明分析など多角的なリサーチが実施された。プロトタイプの検証やデジタルモデリングを通じて、鋼材の露出がもたらす美しさと企業アイデンティティの強化が実証され、サステナブルなインテリアデザインの新たな指標となった。

最大の課題は、再生鋼材を単なる構造材から美的要素へと再定義することだった。アングル鋼や鉄筋、フラットバーを意匠的に露出させるため、精密なディテール設計と新しい仕上げ技術が求められた。また、素材の生々しさと洗練されたデジタルモチーフの調和、法規制や生産制約の克服には、綿密なプロトタイピングと反復的なデザイン開発が不可欠だった。

2022年初頭から設計が始まり、2023年中頃に着工、2024年初頭に竣工したこのオフィスは、延床面積3,931.89㎡、地上4階建て。企業のサステナブル経営とイノベーションへの姿勢を体現し、従業員のエンゲージメント向上と業務効率化にも寄与している。2025年にはA' Design Awardのシルバー賞を受賞し、技術力と芸術性の高さが国際的にも認められた。

「Embraced in Recycled Steel」は、産業遺産と現代美、サステナビリティとデジタルデザインが交差する新時代のオフィスのあり方を提示している。再生素材の可能性を引き出し、企業アイデンティティを空間に昇華させるこの試みは、今後の建築・インテリアデザインに新たなインスピレーションを与えるだろう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Nobuaki Miyashita
画像クレジット: Image #1,#2 : Photographer Nobuaki Miyashita Variations, 2024 Image #3,#4,#5 : Photographer Sato Kenta, Variations, 2024.
プロジェクトチームのメンバー: N/A
プロジェクト名: Embraced in Recycled Steel
プロジェクトのクライアント: Kyoei Steel Ltd.


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