クライペダ州立音楽劇場のインテリアデザインは、建築家マリウス・マテイカによるもので、海岸線の砂や波の形状、そして街を象徴する赤レンガの建築から着想を得ている。劇場という「ドラマ」の場にふさわしい素材として選ばれたのは、古代から親しまれてきた粘土。その選択が、空間全体に温かみと力強さ、そして独特の緊張感をもたらしている。
このプロジェクトの最大の特徴は、世界最大級の天然粘土インテリアである点にある。ホールの壁や天井には30トン以上の粘土が用いられ、全体のパターンはアーティスト、マンタス・ペトラヴィチウスによって一貫して創り上げられた。空間の各面は可動式で、コンサートや演劇、会議などイベントの性質や求められる音響に応じて開閉し、反響を自在にコントロールできる設計となっている。
施工は手作業による7段階の工程を経て行われた。専用に開発されたツールを使い、粘土を吹き付け、波のような模様を形成。乾燥、研磨、再度の吹き付け、ブラッシング、グレージング、保存処理といったプロセスを繰り返し、約9か月をかけて完成した。全体のプロジェクト期間は5年に及び、劇場全体の規模は1万平方メートル、観客席は700席を誇る。
ホールだけでなく、ロビーや通路、階段などの共用空間にも粘土がふんだんに使われている。各エリアごとに異なるパターンが手作業で施され、連続性と多様性を両立。特にホールの装飾は、空間全体を一つの大きなアートワークとしてまとめ上げることが最大のチャレンジとなった。
この「Clay Moulded」は、2025年にA' Design Awardのゴールド賞を受賞。審査員からは「芸術、科学、デザイン、テクノロジーを前進させる卓越した創造性」と高く評価された。伝統素材と現代建築の融合が、未来の劇場空間に新たな可能性を示している。
クライペダの海と粘土が紡ぐこの劇場は、素材の持つ温もりと手仕事の力強さ、そして革新的な空間設計が見事に調和した現代建築の傑作として、今後も多くの人々にインスピレーションを与え続けるだろう。
プロジェクトデザイナー: Marius Mateika
画像クレジット: Photographer: Leonas Garbačauskas
プロジェクトチームのメンバー: Architects: Marius Mateika
プロジェクト名: Clay Moulded
プロジェクトのクライアント: Mama architects