都市の光と影を紡ぐ「Urban Prism」住宅の革新

都市型住宅におけるプライバシーと開放性の新たな調和

「Urban Prism」は、都市の厳しい規制を創造的な可能性へと転換し、現代の都市生活に新たな価値をもたらす住宅プロジェクトである。伝統的な日本建築の要素を現代的に再解釈し、光と空間の豊かな体験を実現している。

建築家・宮下信明による「Urban Prism」は、東京都立川市に建てられた三階建ての住宅である。敷地面積100.13平方メートルという限られた都市空間の中で、プライバシーと開放感を両立させるための独自の設計が施されている。日本の厳しい高さ制限やセットバック規定を巧みに活かし、彫刻的な外観と多層的な空間構成を実現した。

この住宅の最大の特徴は、境界壁と門によって生まれる「バッファゾーン」である。外部と内部を緩やかにつなぐこの空間には、自然光と風が満ち、都市生活における閉塞感を和らげる。中庭はリビングの延長として機能し、可動式のスクリーンによってプライバシーや採光を自在に調整できる。黒竹とアッパーライトが玄関を彩り、和の美意識を現代的に表現している。

建築技術面では、都市環境に適した耐久性の高い素材が選ばれている。外壁にはテクスチャーのある繊維セメントサイディングを採用し、光と影のコントラストを強調。内部は無垢材、スチール、ガラスを調和させ、温かみと現代性を両立させている。オーク材の床が触覚的な心地よさを生み、高性能断熱ガラスや可動スクリーンが快適な採光・通風・プライバシーを実現する。

「Urban Prism」は、都市住宅の課題である「密集」と「静けさ」の両立に挑戦した。建物のボリューム操作や素材選定、先進的なシミュレーションによる採光・通風の最適化など、細部まで計算された設計が特徴だ。建築家は、都市の規制を制約ではなく創造の源泉と捉え、都市生活の質を高める新たな住まいのあり方を提示している。

2019年に竣工した本プロジェクトは、A'デザインアワード2025年建築部門でブロンズ賞を受賞。都市型住宅における革新的な空間提案と、アート・サイエンス・デザイン・テクノロジーの融合が高く評価された。都市生活における快適性と美意識の両立を目指す人々にとって、「Urban Prism」は新たなインスピレーションとなるだろう。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Nobuaki Miyashita
画像クレジット: Image #1, #2,#3, #4, #5: Photographer Nobuaki Miyashita, Variations, 2019
プロジェクトチームのメンバー: N/A
プロジェクト名: Urban Prism
プロジェクトのクライアント: Aida Sekkei Co., Ltd.


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