ニューヨークのカフェ文化を紡ぐ「Roots」ジンの物語

移民と地域社会をつなぐデザインの新たなかたち

「Roots」は、ニューヨークのカフェを舞台に、移民や新参者が地域社会とつながる瞬間を記録したジン(Zine)コレクションです。デザイナーのXun Zuoは、コーヒーというグローバルな象徴を通じて、ブランドと体験デザインが人と人との関係性にどのような影響を与えるかを探求しています。

このプロジェクトは、ニューヨーク各地のカフェを巡り、移民や外部から来た人々のストーリーを集めることから始まりました。カフェは単なる飲食の場ではなく、地域社会のハブとして機能し、異なるバックグラウンドを持つ人々が出会い、つながる場所となっています。Xun Zuoは、コーヒーが持つ「つなぐ力」に着目し、個々の体験や感情をビジュアル化したジンとしてまとめました。

「Roots」は、6冊のジンから成るモジュラー型のアーカイブです。それぞれのジンは、ストーリーテラーの個性や感情を反映したデザインで構成され、紙の種類や印刷手法、製本方法も多様です。縫い目やコプティック製本、真空パックという独自のフォーマットは、都市の流動性や一時性、そして感情の揺らぎを象徴しています。

このコレクションの特徴は、物理的な触感とストーリー性の融合にあります。読者は、ジンのページをめくることで、ニューヨークのカフェで交わされた多様な声やリズムに触れることができます。最初のジンではプロジェクトの着想が紹介され、続くジンにはさまざまな移民の物語が収録されています。最後のジンには、読者自身が物語に参加し、新たな声を加えるためのガイドが含まれています。

制作過程では、ストーリーテラーとの対話から素材やデザインが決定されました。中国の「赤い糸伝説」にインスパイアされた製本は、人と人とのつながりや距離感を象徴しています。また、真空パックにはビジネスカードが同封されており、物語への参加を促す招待状の役割を果たしています。

このプロジェクトは、定性的・定量的なリサーチを通じて、カフェブランドが消費者の意思決定や感情にどのような影響を与えるかを分析しています。40名以上へのインタビューやアンケート調査から、ブランド体験と感情的なつながりが消費者エンゲージメントを高めることが明らかになりました。特に、非ネイティブスピーカーにとって、空間やデザインがもたらす間接的な影響は大きな意味を持ちます。

「Roots」は、2025年のA' Print and Published Media Design Awardでブロンズ賞を受賞し、アート、サイエンス、デザイン、テクノロジーの融合による社会的価値が高く評価されています。小規模ビジネスの社会的役割や、感情デザインが包摂性を生み出す可能性を示唆する本プロジェクトは、都市生活における新たなコミュニティのかたちを提案しています。

「Roots」は、デザインが耳を傾け、物語を受け入れることで、都市に生きる人々のつながりを可視化し、未来のコミュニティ形成に貢献することを目指しています。読者もまた、この物語の一部として、新たな声を届けることが期待されています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Xun Zuo
画像クレジット: Xun Zuo
プロジェクトチームのメンバー: Xun Zuo
プロジェクト名: Roots
プロジェクトのクライアント: Xunzuodesign


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