失われた記憶と自然が交差するポケットガーデンの新提案

都市化の波と共生する小さな庭園がもたらす癒しと再生

中国の都市化が進む中、従来の農村生活から都市型コミュニティへの移行が多くの世代に影響を与えている。Bowen Qianによる「Good Old Days and Pollinators」は、失われつつある精神的な故郷と自然の共存をテーマにしたガーデンショーケースであり、都市空間に新たな価値と記憶の再生をもたらす。

「Good Old Days and Pollinators」は、都市化によって消えゆく古い住宅と自然の共生をコンセプトにしたポケットガーデンである。中国の多世代が経験する住環境の変化を背景に、Bowen Qianは、取り壊された住宅の残骸と生態系の再生を模した空間を創出。都市開発の現場に残る「物理的な家」と「精神的な故郷」の喪失を、庭園という形で可視化している。

このガーデンの最大の特徴は、残された住宅構造物と自然植栽を融合させ、ポリネーター(花粉媒介者)を誘引する点にある。花壇にはバグホテルやインセクトハウスが点在し、昆虫たちの生息地を提供。これにより、都市の一角に生態系の循環を生み出し、訪れる人々に多感覚的な没入体験をもたらす。

設計の中心となる三つの「壁」は、都市化による精神的な土壌流失を象徴。これらの壁は、物理的な水や土壌の保全だけでなく、心の中の「失われた土壌」をも守る存在として機能する。幅8000mm、奥行5000mm、高さ3500mmというスケールで、街角に小さなオアシスを実現している。

来園者は、遺構に触れ、花の香りや植物の手触り、ポリネーターとの近接した交流を通じて、時の流れと自然・人間の歴史を体感できる。都市の喧騒の中で、過去と現在、自然と人間が交差する新しい癒しの場となっている。

このプロジェクトは、2025年4月に蘇州で開催された「中国ガーデン博覧会」にて期間限定で展示された。都市開発の進む中、元住民や高齢者の精神的な拠り所となり、地域の歴史を次世代に伝える新たな都市緑化のモデルとして注目されている。

「Good Old Days and Pollinators」は、都市化の進展と共に失われる記憶や文化を、自然と共に再生する試みとして高く評価され、2025年のA'デザインアワード銀賞を受賞。都市生活者にとって、心の安らぎと地域の歴史を感じる新しいライフスタイル空間の提案となっている。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Bowen Qian
画像クレジット: Bowen Qian
プロジェクトチームのメンバー: Bowen Qian
プロジェクト名: Good Old Days and Pollinators
プロジェクトのクライアント: Bowen Qian


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