パッシブデザインが生んだ二世帯住宅「S90レジデンス」

台湾の自然環境を活かした持続可能な建築

台湾の北部、台南県に位置する二世帯住宅「S90レジデンス」。その設計は、パッシブデザインのアプローチからインスピレーションを得ており、周囲の自然環境を巧みに活かしています。

この住宅は、若い夫婦とその両親が共に生活するためのもので、公共スペースとプライベートスペースがうまく分けられています。二階建ての建物の二階部分は若い夫婦のためのスペースで、一階建ての部分は両親のためのスペースとなっています。入り口、リビングスペース、キッチンダイニングは一階に配置されています。

この住宅の特徴的な部分は、その外観と構造にあります。白い外壁は周囲の緑豊かな風景に溶け込み、強い直射日光からの熱を軽減します。また、屋根は斜めに設計されており、将来的に太陽光発電パネルを追加する際に最適な日照を得られるように配慮されています。

建物の構造は鋼製で、外装はパネル仕上げとなっています。外装のペイントには、持続可能な建築材料として、100年以上の歴史を持つ貯水池の汚泥を使用した特殊な塗装「LOTAS」が使用されています。

このプロジェクトは、台湾の南部で厳しい日照と高温を持つ環境において、持続可能な住宅を開発するという創造的な課題に取り組んでいます。建物のボリュームは、窓の開口部を自然光からの室内照明のバランスを取るために調整するソフトウェアを使用して検討されました。

「S90レジデンス」は、日照分析や自然換気の促進など、多くの持続可能なデザインアプローチを採用しています。これらの取り組みにより、2021年には「A'アーキテクチャ、ビルディング&ストラクチャデザインアワード」のアイアン賞を受賞するなど、その評価も高いものとなっています。

設計者であるDaisuke Nagatomo氏は、建築物のボリュームについての初期研究を物理モデルを使用して行い、建物の最適な比率を選びました。その後、ディジタルモデルを使用して建物の詳細を微調整し、最終的には窓の開口部を設計しました。これらの設計は、太陽光の照射モデリングに基づいて行われ、室内空間の視覚化も考慮されました。

このように、「S90レジデンス」は、自然環境を最大限に活かした持続可能な建築として、その存在感を示しています。その設計は、自然と調和し、人々の生活を豊かにする新たな可能性を提示しています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Daisuke Nagatomo and Minnie Jan
画像クレジット: Image #1: Jackal Liu Photography Image #2: Jackal Liu Photography Image #3: Jackal Liu Photography Image #4: Jackal Liu Photography Image #5: Jackal Liu Photography
プロジェクトチームのメンバー: Zoe Li Hua Kuo Hayden Wu Esther Jan
プロジェクト名: S90 Residence
プロジェクトのクライアント: Daisuke Nagatomo and Minnie Jan


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