伝統と革新が交差する、木製自転車「Moccle」

安田正輝による自然と人間の調和を追求したデザイン

伝統的な日本の木造建築が震災に強い理由、それは木の柔軟性を活かした構造にある。その特性を自転車に取り入れたらどうなるか。そんな問いから生まれたのが、木製自転車「Moccle」だ。

多くの高品質な自転車は速度を主眼に開発されるが、「Moccle」はその技術を活かし、楽しさを追求した自転車を作り上げた。自然から得られるカーボンファイバーである木を中心に、その振動吸収性と柔軟性を活かした快適な自転車の開発を目指した。誰もが使いやすい高品質でシンプルな機能を持ち、リビングルームに飾れる自転車をデザインした。

木の柔軟性を活かすため、フレームの構造は木繊維の切断を可能な限り避ける大きな二分割構造で設計された。さらに、断面積形状の大きな変化を排除し、滑らかで美しい形状を導き出した。木のシートにカーボンファイバーを積層することで、木の経年変化による収縮や割れを制御し、安全性を向上させた。また、柔軟性と強度のバランスを取ることができた。

「Moccle」は、カジュアルな服装で簡単に乗ることができる自転車だ。誰もが複雑な変速機なしで乗ることができるシンプルなデザイン。普段のスニーカーでペダルを踏むだけで、お気に入りのカフェでリラックスした時間を過ごすことができる。帰宅すると、Moccleの収納スペースは大きなフリップアップドアのあるガレージの裏ではない。特別なディスプレイスタンドにより、収納スペースはリビングルームにまで広がり、Moccleはインテリアの一部となる。

自転車は人間の力を推進力として使う道具だ。振動はパワーロスを生むが、フレームの強度は駆動力を伝達する。フレームは、これら二つの矛盾する柔軟性と強度をバランスさせるように設計された。路面からの振動を減らすため、振動の経路を調査し、これまでにないメカニズムの創造に挑戦した。一般的にフレームはシートチューブを上部メンバーに固定しているが、この部分にスライディングブッシュを使用したフリージョイントを発明した。ホイールから発生する振動は上方に伝わらない。主要な材料として、柔軟性と強度を簡単にバランスさせることができるハイブリッド材料を開発し、サドルに重量がかかると全体のフレームが弓のように曲がって振動を吸収する構造を取り入れた。

「Moccle」は、伝統的な日本の木造住宅の耐震性に焦点を当て、木を主要な材料として使用した。木とカーボンファイバーを組み合わせたハイブリッド材料を使用して、柔軟性と強度のバランスを取った。機能を最小限にし、速度よりも快適さと楽しさを開発したことで、Moccleは移動の道具だけでなく、リビングルームに飾ることができるインテリアの一部ともなった。

このデザインは、2023年のA' Bicycle Design Awardでゴールデン賞を受賞した。ゴールデンA' Design Awardは、デザイナーの才能と知恵を反映した素晴らしい、優れた、トレンドセッティングな作品に授与される。それらは、芸術、科学、デザイン、技術を進化させ、その卓越した特性とともに世界に大きな影響を与える尊敬される製品や明るいアイデアである。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Masateru Yasuda
画像クレジット: Masateru Yasuda
プロジェクトチームのメンバー: Masateru Yasuda
プロジェクト名: Moccle
プロジェクトのクライアント: Masateru Yasuda


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