映画館の新たな可能性を提示する「ユナイテッド・シネマ浦和」

映画館をアートミュージアムとして再定義

映画館は単に映画を観る場所ではなく、知的好奇心を刺激する場所としての新たな可能性を提示する「ユナイテッド・シネマ浦和」。デザイナーの加茂一郎と秋山邦久によるこのプロジェクトは、映画館をアートミュージアムとして再定義し、訪れる人々に新たな体験を提供します。

このプロジェクトの始まりは、ショッピングモール内にある市立図書館との良好な関係からでした。訪れる人々は高度な感受性と知的好奇心を持っており、映画を知的なコンテンツと考えると、映画館は図書館や美術館のように、そうした人々を満足させる場所になり得ると考えました。そのため、映画館は大人が快適に過ごせる場所であり、通常の映画館の内装が持つ活気や刺激性とは異なるものであるべきだと考えました。

アートミュージアムのような雪白のロビーは、白い壁、白い天井、ダークトーンの床というデザインで、訪れる人々を迎え入れます。ガラス張りのプロジェクションルームは70メートルに及び、映画がどのように投影され、プロジェクターやフィルム、キセノンランプなどの機器がどのように使用されているかを見ることができます。これらの展示は、映画に関連する説明とともに行われ、映画館を「シネマミュージアム」として位置づけています。

また、映画に関連する1000冊の書籍を揃えた「ライブラリーカフェ」も設けられています。ここでは、訪れる人々が映画の世界に浸りながらコーヒーを楽しむことができます。映画館の椅子でリラックスしながら、映画について深く知ることができる空間となっています。

この映画館は、フォーマルな施設である市立図書館と、ファッショナブルな場所であるショッピングモールをつなぐデザインが施されています。映画館が公共空間から分離されたり、孤立した存在にならないように、映画館のファサードは目立たないデザインになっています。そのため、映画のチケットを持っていなくてもロビーを通り抜けたり、休憩を取ることができます。

ライブラリーカフェでは、通常の図書館では禁止されているコーヒーやマフィンを楽しみながら読書を楽しむことができます。映画に特化した1000冊の書籍が揃っているため、映画についてより深く知りたい人々にとって満足度の高い場所となっています。映画のチケットを持っていなくてもライブラリーカフェを利用することができるため、ショッピングから一息つきたい人や、市立図書館からマフィンをつまみたい人など、気軽に映画館を訪れることができ、建物全体が活気に満ちています。

このプロジェクトは、映画館が単なるテナントとして存在するのではなく、建物全体と関連性を持つべきだという信念から始まりました。そのため、ファッションに敏感な顧客が訪れるカジュアルな空間を作り出すとともに、市立図書館の訪問者が立ち寄るような設定も考慮に入れています。

このプロジェクトの最大の課題は、プロジェクションルームを主役の一つとして再定義することでした。通常、プロジェクションルームはバックヤードに配置され、訪れる人々が見る機会はほとんどありません。しかし、このプロジェクトでは、そのような既成概念を見直し、ガラス張りの部屋やスタッフの運営方法など、様々な要素を変更することで、プロジェクションルームを主役の一つとしました。

この映画館は、映画館の新たな可能性を提示するとともに、訪れる人々の知的好奇心を刺激する空間となっています。その洗練された内装空間は、訪れる人々の体験を一層豊かなものにしています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Kunihisa Akiyama
画像クレジット: Noriyuki Yano/ Nacasa and Partners Inc.
プロジェクトチームのメンバー: Interior Design: Ichiro Katami Graphic and Sign Design: Naoyuki Suzuki Book Select: Yataro Matsuura Cafe Adviser: Sadahiro Nakamura Architect: Kenichi Miyake Art Direction: Kunihisa Akiyama
プロジェクト名: United Cinemas Urawa
プロジェクトのクライアント: Kunihisa Akiyama


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