都市の中の緑と光を取り込む家:「Ike」

森本初男による、独自の素材感と機能性を兼ね備えた家

都市部の密集した住宅地に建つ家。そのプライバシーを守りつつ、閉塞感を避けるための設計が求められます。森本初男は、その解決策として、外装に様々な透過機能を持つ素材を用いることに焦点を当てました。

この建物の外壁は、木目調のコンクリートで作られています。このような肌触りは、型枠の内側に杉板を貼り付け、そこにコンクリートを流し込むことで表現されています。このコンクリートの壁を立体的に配置することで、建築物にダイナミズムを与えています。表面の構成を変えることで、全体の形状の彫刻的なアクセントとなります。これらの「偏差」は、光と風が出入りするスペースを提供し、内部空間にも利点をもたらします。

森本は、この住宅地の街並みにも配慮しています。外装材は、流行に左右されないものであるべきでした。そこで彼は、普遍的な木目調のコンクリートの露出仕上げ、ガレージドアの木材、カーテンウォールのガラス、石のフェンスブロックを使用しました。これらは、素材の質感を直接伝える堅牢なデザインを持っています。密集した都市部では、奇抜でない良好な街並みの形成に貢献します。

この家は土地の約70%を占めています。3箇所に庭を設けることで、間接的な光と通風を部屋に促すようにしています。その結果、住人は家の内部空間からそこに配置された緑を見ることができます。

このプロジェクトは2016年10月に名古屋で始まり、2017年5月に建設が始まり、2019年1月に完成しました。明治時代から150年前、封建的な規制が撤廃され、財力に応じて土地を所有し、家を建てることが可能になりました。都市部の敷地はますます細分化され、隣家との距離が近くなり、プライバシーが意識されるようになりました。土地と建物の所有権意識が高まり、境界での行動に対して人々は神経質になりがちです。しかし、住宅は閉鎖的すぎてはなりません。今回の課題は、建築が身につける様々なスキンの透明性の完璧なバランスです。

都市の環境では、隣の家との配慮が必要です。この家の形状は、隣の家が全ての日光を制限しないように、上の階に向かってオフセットされています。さらに、法的な制約である高さを抑えつつ、必要な生活空間を確保するように設計されています。

この家は、基本的な立方体に様々な機能を持つスキンを持たせることで建築デザインを創り出しています。穴あきのブロックは、視線を制限しながら通風を促進します。縦横のグリッドは角度を操作することで視線を遮りますが、中からは道路沿いの木々を見ることができます。カーテンウォールのガラス窓は、昼間は視線と強い日光を反射しますが、夜は室内の光が街に漏れ出し、街並みに貢献します。窓からは、新緑や桜など季節の変化を感じることができます。

このデザインは、2021年のA'建築、建物、構造デザイン賞でブロンズを受賞しました。ブロンズA'デザイン賞は、経験と創造力を証明する優れたデザインに授与されます。芸術、科学、デザイン、技術のベストプラクティスを取り入れ、強力な技術的・創造的スキルを発揮し、生活の質を改善し、世界をより良い場所にすることを評価されています。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Hatsuo Morimoto
画像クレジット: Hatsuo Morimoto
プロジェクトチームのメンバー: Hatsuo Morimoto
プロジェクト名: Ike
プロジェクトのクライアント: Hatsuo Morimoto


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