「The Flow」は、台北市にある住宅ビルの公共空間としてデザインされました。このビルはかつて「帝国使節通り」と呼ばれ、アメリカ大使館や大使公邸が立地していました。その歴史的な背景を踏まえ、ペン・シュ・チェンは水の流れを象徴としてデザインに取り入れました。
このデザインの最大の特徴は、木製の天井です。メインエントランスからレセプションデスク、ラウンジ、メールルーム、地下駐車場の天井まで、曲線を描く波のような三次元形状が続いています。これにより、空間全体が水の流れを表現しているかのような印象を与えます。
また、2階以上のエレベーターホールの側壁と天井には、波打つ水を表現したステンレス製の波状パネルが使用されています。これらのパネルは、動きのある水の表現方法として新たな試みです。
公共空間の壁には反射仕上げが施されており、視覚的に空間を広げています。レセプション、地下遷移ゾーン、エレベーターホールには白い大理石調のセラミック壁タイルが使用され、空間の拡張感をさらに強調しています。
デザインの過程で最大の課題は、ビルの幅の制限でした。しかし、ペン・シュ・チェンは大きな耐火ガラスの窓とドアを用いて空間を長く見せ、レセプションから車道を見渡せるようにすることで、セキュリティ面も考慮しました。
このデザインは、環境持続可能性を考慮したものでもあります。水と同様にリサイクル可能な資源である木材とステンレス鋼が主要な素材として使用されています。また、内部照明のエネルギー消費を抑えるために、壁は薄色が選ばれました。さらに、すべての床と壁には地元でデザイン・製造されたタイルが使用され、カーボンフットプリントの削減にも貢献しています。
このような独創性と技術力を兼ね備えた「The Flow」は、2023年のA'インテリアスペース、リテール&エキシビションデザイン賞でブロンズを受賞しました。この賞は、芸術、科学、デザイン、技術のベストプラクティスを取り入れ、強力な技術力と創造力を発揮し、生活の質の向上に貢献する優れたデザインに授与されます。
ペン・シュ・チェンの「The Flow」は、公共空間デザインの新たな可能性を示す作品と言えるでしょう。その独特な美学は、これからのデザインに新たなインスピレーションを提供します。
プロジェクトデザイナー: Peng-Hsu Chen
画像クレジット: Peng-Hsu Chen
プロジェクトチームのメンバー: Peng-Hsu Chen
プロジェクト名: The Flow
プロジェクトのクライアント: Aesthetic of Space Design Co., Ltd.